大相撲「同部屋対戦」を行わない深すぎる理由 「稀勢の里」と「高安」兄弟弟子である事の意味

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5月31日に大関昇進の伝達式を終えて、兄弟子の横綱稀勢の里(左)と握手する高安。7月の名古屋場所で高安は新大関として土俵に上がる(写真:共同通信社)
いよいよ明日、7月9日に愛知県体育館で初日を迎える大相撲名古屋場所。左胸や腕のけがで出場が危ぶまれていた横綱稀勢の里は、出場を決断。同じ田子ノ浦部屋の弟弟子、高安は新大関として土俵に上がる。
今場所も無事に兄弟弟子のそろい踏みが実現するが、大相撲では同部屋の力士同士は原則として対戦しない決まりがある。伝統なのか、あるいは合理的な理由があるのか。大相撲の奥深い世界をのぞいてみよう。

 

「こんなにうれしいことはない」。5月31日に行われた高安の大関昇進伝達式。満面の笑みを浮かべて、こう言ったのは、高安の所属する田子ノ浦部屋の兄弟子である横綱稀勢の里だった。高安本人は、喜色満面というよりも、喜びと安心と緊張が入り混じったような顔をしている。

ちょうど4カ月前、自らの横綱昇進伝達式の時は、稀勢の里自身も同じような表情を見せていた。

高安の大関昇進を喜ぶ稀勢の里に見たもの

しかし、この日の横綱は違った。まるで屈託のない、純粋に喜びにあふれた笑み。「大関の上にはもう一つあるんで、また一緒に伸ばしていければいい」――。弟弟子である高安への期待を込めて語る姿に、相撲界独特の「部屋の絆」を改めて感じた。

現在、大相撲の力士は約700人。そのすべてが、45ある相撲部屋のいずれかに属している。相撲部屋は家族だ。師匠である親方=父親と、その妻のおかみさん=母親の元、たくさんの力士=子供たちが一つ屋根の下に寝泊まりし、同じ釜の飯を食う。

そんな相撲部屋の大きな柱となるのが、毎日の稽古だ。力士たちが目指すのは、強くなって番付を1枚でも上げること。稽古は、そのための貴重な鍛錬の場だ。力士たちは全力を尽くしてぶつかり合い、力をつける。仲間が先に出世をすれば、うれしさとともに悔しさも胸に、「なにくそ」と稽古に励む。互いに刺激し合い、稽古に励んでともに上を目指すのが、相撲部屋という制度なのだ。

なかでも大切なのが、番付が上の者が下の者に胸を出し、鍛えることだ。同じくらいの力の者同士が取るだけでは、壁を突き破ることは難しい。自分より力が上の者にぶつかり、跳ね返されてはまた向かっていく――そんな日々の積み重ねが、番付を上げる原動力となり、部屋全体に活気を生む。かつて、横綱千代の富士が九重部屋の後輩である保志(後の横綱北勝海)を鍛え、九重黄金時代を築いたのはよく知られた話だ。

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