インターネットは共産党宣言の夢を見るか? すべてをシェアし始めた人類の未来を、シミュレーションで考える

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フェイスブックに記事を書いては「シェア」してもらい、ツイッターでは自分のつぶやきを「リツイート」という形で他人にタダであげている。サービスが課金制になると文句を言い、無料で提供してくれるライバル業者に乗り換える。無償サービスを支えているのは広告収入だが、これも情報を独占するよりも共有させることで、富を生み出すしくみだろう。

しかし、ユーザーから金をとるなという私たちの「共産主義的」な発想の結果、雇用はコストダウンのために世界最安値で労力を提供する途上国へ流出し、「資本主義的」な収益構造はより露骨になっている。

かつてはケインズ的(福祉国家的)な修正資本主義が二つの体制を収斂させると言われたが、どうも今日の私たちは、それとは違う形でのキャピタリズムとコミュニズムの「混合経済」を生きているようだ。

独裁にも直接投票にもなる、新しい民主主義の提案

「300年後の読者」を想定して語られるアイデアが、賛否両論を呼んだ話題作。
鈴木健『なめらかな社会とその敵』(2013年、勁草書房)

だとすれば、もっとラディカルな混ぜ方があってもよいのではないか。本年の話題書・鈴木健なめらかな社会とその敵は、そのマニフェストとして読むこともできる。

なめらかな、とは「あいまいさ」をポジティヴに評価するための表現だろう。情報に関して所有者をあいまいにするサービスが成り立つなら、その他の諸制度についても同様のしくみをデザインできるのではないか、という思考実験である。

最もわかりやすいのは、著者が「分人民主主義」と呼ぶ新たな投票システムだ。

現在の民主主義は国ごとに分かれて運営されている(=なめらかではない)ため、日本国の首相以上にアメリカ大統領に誰がなるかの方から大きな影響を受けていても、日本人はその選挙に参加できない。

また一度選んだ議員が任期まで務める間接民主制では、選挙のない期間にも刻々と変わり続ける有権者の民意を、そのつど政策決定に反映していくのも難しい。

鈴木氏の見るところ、この困難は一人の人間が一か国にのみ帰属し、一度の選挙で「1票」しか投票できないという制約から生じている。ならば票の譲渡や分割を積極的に認めることで、より柔軟な新しい民主政を構想しようと呼びかけるのだ。

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