子どもを極端に清潔な環境で育てていいのか 微生物との付き合いは健康に影響する

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1つ目は、感染症にかかっている人の近くに赤ちゃんを連れて行かないようにすること。そして2つ目は、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いたり、触れたりする前には、手を洗うようにみんなに頼むことだ。感染症にかかるのを避けたい気持ちもわかるが、赤ちゃんを他人に触らせることは微生物と接する方法の1つなので、健康な人との身体的接触は、子どもにとって危険ではなく、むしろ有益な効果があるといってもいい。

「自分の子どもが風邪をひいているときには、ほかの子どもにうつさないように家から出さないほうがいいのか?」。これは間違いなく、イエスかノーかで答えられない質問の1つだ。

幼いころに微生物にさらされることで、ぜんそくやアレルギーのようなある種の免疫疾患から保護される可能性があるという説には、しっかりとした証拠がある。しかしながら、大きくなってから免疫疾患にかかるのを防ぐために、病原菌と接触したり、衛生的な習慣をやめたりする必要があることを示す証拠は存在しない。

とはいえ、感染症に一度もかからずに成長することは不可能だ。感染症にかかるのは、人間であること、そして何より子どもであることの証しである。子どもが病気になることを何としてでも防ごうとすれば、病原性のない、さまざまな有用な微生物と子どもが接触するのを妨げるような行動に行き着いてしまう。子どもが風邪だとか、何かほかの小児感染症にかかるのが心配だからといって、過保護にするのは望ましくない。

子どもが風邪をひいたり、感染症にかかったりしないかと何かにつけ心配しないことが重要だが、子どもを病気の運び屋にさせないことも大切だ。子どもの具合が悪い場合には、家で過ごさせ、病気を広げないのがいちばんだ。

鼻水が出ている子と一緒に公園で遊ぶくらいなら、それほどひどい影響はないだろうが、ひどい風邪をひいた子どもや、水疱瘡の子に誕生パーティへ来てもらいたい人などいない。それに、子どもの具合がよくないのなら、家で安静にさせて、素早い回復の機会を与えたほうがいい。

ただし、これらはワクチン接種を受けている前提での話

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ここまでの話は、大半の人がワクチン接種を受けている西洋社会を前提にしている。

ワクチン接種は、ひどい病気にならない程度に、子どもを有害微生物にさらす人工的な方法だといえる。近ごろの子どもが、天然痘やポリオ、ジフテリアといった生死にかかわる重い感染症にかかるリスクが低いのは、ひとえにワクチンのおかげである。50年前に、子どもを熱のある友だちと遊ばせたら、風邪のウイルスだけでなく、髄膜炎や百日咳、はしかなどの重い感染症などの原因菌にさらしかねなかった。

もしわたしたちが生きているのが、人口の一部しかワクチン接種を受けていない世界だったら、ここでのアドバイスはまったく違っていただろう。もし自分の子どもにワクチン接種をさせないことにしたのなら、その子どもは、生死にかかわる重い感染症にかかる可能性が高くなるだけでなく、その病原体を体内に持ち、ほかの人に広げる可能性も高くなる。その場合、子どもの具合が悪いときは、ほかの子どもとの接触を制限するのが賢明だ。

ブレット・フィンレー ブリティッシュ・コロンビア大学教授

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B. Brett Finlay, PhD

バクテリア感染に関する世界的権威。微生物研究歴は30年、450本の論文を発表する一方で、バイオテクノロジーベンチャーのInimex、Vedanta、Microbiome Insights の創業者でもある。カナダの民間人が受けることのできる最高位の勲章、Order of Canada の受勲者。

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マリー=クレール・アリエッタ カルガリー大学准教授

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Marie-Claire Arrieta, PhD

腸内細菌と免疫についての研究者。最近の乳児のぜんそくと重要腸内細菌群欠如についての研究は、2015年にこの分野のブレークスルーとして注目され、数々のメディアでとりあげられた。『Gastroenterology』『PNAS』『Science Translational Medicine』などに論文を発表している。

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