子どもを極端に清潔な環境で育てていいのか 微生物との付き合いは健康に影響する
赤ちゃんの世話をする場合、たいていの人は、清潔さについてより神経質になる。これはよくわかる。しかし最近は、清潔にしなくてはと意識するあまり、赤ちゃんを極端な無菌状態で育てるようになっている。清潔にするための技術が発達したこともあって、おむつバッグには必ずといっていいほど除菌用ハンドジェルがぶら下がっているし、おもちゃやおしゃぶりが地面に落ちたら除菌ウェットティッシュで拭いたり、赤ちゃん用の哺乳びんや食器を毎回使う前に殺菌したりするのが普通になっている。
小さな子どもを土や砂で遊ばせないことも多いし、遊ばせたときには、親は土や砂をすぐにきれいにぬぐい取る。小さな子どもはどろんこになりたいという本能に従うことができず、そのせいで、発達には欠かせない微生物と接触できなくなっている。とはいえ、潜在的に健康への脅威となるものと、見た目が汚いだけのものを区別するのはなかなか難しいものだ。
子どもはいつ手を洗えばいいのか。また、どんな種類のせっけんを使ったらよいか。手洗いは間違いなく、感染症にかかったり、それを広げてしまったりするのを防ぐのにいちばんいい衛生習慣だ。手洗いの習慣が定着しているコミュニティがより健康であることはたびたび証明されているし、微生物と接する機会を増やすためだけに手洗いの習慣をやめるべきではない。
そうはいっても、子どもは朝から晩まで手を洗っていなくてもいい。手洗いをするべきタイミングは、食事の前、トイレの後、病気の人に接した後など。その子ども自身が病気であれば、ほかの人に触れる前にも手を洗ったほうがいいだろう。ゴミや、腐っている疑いのある食品、動物のふんや農場の動物に触れた後、多くの人が出入りする場所(公共交通機関やショッピングモール)に行った後にも手を洗わせたほうがいい。
逆に、子どもが手を洗う必要がないのは、外で遊んだ後(すぐに食事をする場合には洗う)、外から家に入ってきた直後、ほかの子どもと遊んだ後(その子が感染症で具合が悪いのでないかぎり)だ。子どもはよく外で遊び、はだしになったり、泥だらけになったりするのも許容できるようになるといい。そうやって遊んだ直後に手洗いは必ずしも必要ではない。ただ、ここに挙げた例がすべてではない。
日常生活で抗菌せっけんが必要になることはない
どんな種類のせっけんを使うかは個人の好み次第ながら、抗菌せっけんは避けることをおすすめしたい。アメリカ食品医薬品局の諮問委員会は、抗菌せっけんには、通常のせっけんと水の組み合わせを上回る効果がないことを明らかにしている。病院や、医療レベルの衛生状態が必要とされる場所を別とすれば、日常生活で抗菌せっけんが必要になることはない。
同じことは消毒液にもいえる。昔ながらの普通のせっけんと水で洗えば十分なので、その代わりとなるような消毒液は(除菌用ハンドジェルもそうだが)きれいな流水とせっけんがない場合にのみ使うほうが望ましい。
このアドバイスは、確かに常識に反しているように思えるし、抗菌成分を含まないせっけんを見つけるのは予想以上に大変だ(液体ハンドソープはほとんどが抗菌成分を含んでいる)。せっけんでよく使われている抗菌剤のトリクロサン(およびその誘導体のトリクロカルバン)は、デオドラントや歯磨き粉、洗剤、化粧品にも含まれる。