福岡の「閑散だった動物園」が復活できた理由 「大牟田市動物園」が教えてくれる本当の幸せ

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福祉に共感するスタッフが集まり、新しい知識や技術が加わって取り組みも加速している。

そして、来園者や一般の人にも動物への理解が広まり始めている。「メディアは何か1つを取り上げて“V字回復”と報道されますが、ここ数年でこれら全ての要素が絡み合って、いい方向に流れ出したと感じています」

人気者だったゾウが今から4年前に死んだあと、「次のゾウはいつ来るの?」と来園者にたびたび聞かれ、椎原さんは園としての考えをもっと広めなければと痛感した。

「ゾウは本来群れで広いところで生活する動物なので、もううちの園で飼育する予定はないんです。動物が幸せに暮らせる環境が重要ですから」

来園者の見方を変える情報発信

情報の出し方にも気を配る。「一般的な動物園は“◯◯の赤ちゃんが生まれました”と発信して、かわいい赤ちゃんに注目が集まります。でも、うちでは“◯◯が出産して子育てを頑張っています”と発信することで、お母さんが育児する姿や家族のあり方、命のつながりにも注目してほしいと思っています。ちょっとした情報も出し方で、来園者の見方が変わるんですよね」

キリンは、ふれあいの時間になると人のところにやって来てくれる。キリンが向こうへ行ってしまったら、ふれあいタイムはそこで終了。無理させないのが大牟田市動物園のスタイルだ(写真:大牟田市動物園)

11年前に比べて、園で飼育する動物の種類は3分の2、動物数は半数になったが、飼育員は11人から13人に増えた。動物の幸せを願い、動物福祉にじっくり取り組むためだ。

現在、10の大学と連携して研究を進め、地域の企業や学校とコラボしてオリジナル商品の開発も行っている。

「これからも単に来園者数を増やすのではなく、地域とつながり、人びとに愛される動物園を目指したい。そして、動物の幸せな暮らしにつながる取り組みを、皆さんと共に考え実践していきたいです」

動物園を回ってみると、どの動物も人を警戒することなく、のびのびと過ごしていた。「キリンとのふれあい体験」はキリン自らやって来て、来園者になでられながら気持ちよさそうな表情をしている。ヘビやリスザルのガイドは、イキイキとした動物はもちろん、楽しそうな飼育員の姿が印象的だ。深い愛情に包まれた動物の幸せは、人の幸せにもつながっていると実感した。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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