36歳社長が変身する「かめライダー」の正体 創業60年超えた福岡の自動車教習所が大変貌
黄緑とオレンジの鮮やかな全身タイツに身を包み、交通安全教室やイベントにハイテンションで登場する。その名も「かめライダー」。南福岡自動車学校のイメージキャラクターに扮するのは、代表取締役社長の江上喜朗さんだ。新しい経営ビジョンを掲げ、2013年6月にキャラクターを生み出し、自らノリノリで演じていた。だが、その陰では、不満を募らせた社員の退職がとまらなかった――。
苦境の自動車教習所、ミナミも例外ではなかった
「ピーク時は週2人ペースで退職して、3年間で半数の社員が去っていきました。バカらしい、ついに社長がおかしくなった。そんな陰口が渦巻いていましたね」と江上さんは振り返る。江上さんの祖父が、1956年に福岡県福岡市で創業し、1960年に大野城市に移転した南福岡自動車学校、通称ミナミ。2代目の父親から経営を引き継いだのは、今から6年前の2011年、30歳のときだった。
少子化と若者の車離れを背景として、日本の自動車教習所は苦境に陥っている。警察庁の運転免許統計によると、2016年の教習所卒業生は約156万人で、ピーク時の1990年代前半から100万人以上も減少。この間に200以上の教習所数が閉鎖に追い込まれ、1332校になった。
九州でナンバーワンの入校者数を誇っていたミナミも、例外ではない。入校者数は右肩下がりで減収減益が続いていた。江上さんは子どもの頃から「いつか継ぐだろう」と思いながらも、大学進学を機に東京へ。20代は大手企業のリクルートや、ベンチャー企業の取締役としてがむしゃらに働いた。体調を崩したのを機に29歳で帰郷し、ミナミへ入社。数カ月後、父親から突然こう切り出されたという。
「私はもう今の若い子たちの感性がわからん。お前がビジョンを描いてくれ」
「期待に応えたい」、そんな思いで2011年社長に就任。不安はなかったのかと江上さんに問うと、「経営は面白そうだし、絶対にできると思ったんです。学生時代に熱中していたサッカーも、仕事も諦めずに考え抜いて努力を続ければ、結果が出ると実感していたので」と冷静に話す。
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