36歳社長が変身する「かめライダー」の正体 創業60年超えた福岡の自動車教習所が大変貌

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とはいえ、ビジョンはすぐに描けない。それまでのミナミは「真面目に厳しくミスなく教習する」ことをモットーとし、人口増加の時代には、さほど努力しなくても教習生が集まった。しかし、少子化と車離れに加えて、近い将来には自動運転の大波が確実に押し寄せる。生き残るには改革が必須だ。江上さんは経営者や大学教授などに会って指導を仰ぎ、ひたすら考えた。

交通安全のヒーロー・かめライダーが誕生した日

交通安全のヒーロー・かめライダーに扮する江上社長(写真:南福岡自動車学校)

そして社長就任から1年後の2012年11月、全社員を集めて経営計画発表会を開いた。同社が経営方針を皆で共有するのは、創業56年で初めてのこと。100人を前に、江上さんは渾身の力を込めて語りかけた。

「教習生を受け入れて滞りなく卒業させるだけの仕事は、もうやめます。『愛のあるおせっかい』で教習生に接しましょう。私は交通安全のヒーロー・かめライダーになり、ミナミの新たな価値を創造します。これからのミナミは『感性あふれる“ひと”を創る』という理念で学校を運営します」

社員の反応は2割賛成で2割反対、6割はどちらでもない雰囲気だったという。

厳しい教習所から、愛があふれる楽しい場へ。「昔の若者は車に憧れ、ワクワクしながら教習所に通っていた。でも、最近の若者は、就職のためや親にいわれたといった理由で、仕方なく来る。もともとモチベーションが低いし、叱られることにも慣れていない。上から厳しく教えるのではなく、楽しく学べる教習所にしようと決めました」(江上社長)

スタッフや指導員が、ホスピタリティ精神を持って教習生と向き合うように意識改革を徹底した。20歳前後の教習生にとって、指導員は何でも相談できる存在となり、楽しく通ってほしいと考えたのだ。また、卒業パーティや肝試し大会などのイベントを開催し、明るい雰囲気づくりに努めた。

さらにミナミ変革の象徴として、江上さん自ら「かめライダー」に扮した。街でチラシ配りなどをしていると話題になり、交通安全講話やイベントに引っ張りだこに。市の成人式に招かれ、20分講演したこともある。取材も殺到し、メディア露出を広告費に換算すると、7000万円を超えたという。

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