「民主村」徹底破壊があぶり出す中国の暗部 監視と密告に住人たちは口をつぐんでいる
2011年に烏坎村で起きた抗議運動において、前出のZhuang氏は治安当局の機動警官隊から、1万5000人が暮らす海岸沿いの集落を守るためのバリケードを築く作業に加わっていた。電話取材に応じた同氏は、2014年に村を離れ、ニューヨークに亡命中だ。
烏坎村は丘陵と湾に囲まれた美しい土地だ。牧場は草が生い茂り、魚やエビを育む豊かな水辺があり、それらを狙ってカワセミが訪れる。
烏坎村の受難が始まったのは1990年代だ。村の指導部が結んだ一連の不透明な取引によって、農地が次々と土地開発業者に売却され始めたのだ。
世界中のメディアが注目
2011年には、大勢の村民が売却された土地の返還を訴え始め、この問題が顕在化した。
数カ月に及んだ地元当局や治安部隊に対する抵抗運動は、世界中のメディアの注目を集めた。そしてついに省政府が譲歩し、共産主義国の中国では極めて異例な「民衆の勝利」が実現した。
土地取引の中心だった村の指導部は解任され、自由選挙が実施された。その結果、抗議運動の指導者7人全員が当選した。
だが発足したばかりの新指導部は、すぐに旧指導部の関係者による報復に直面したという。当選から数年内に抗議運動の幹部たちは公職を去り、昨年夏には村長の林祖恋氏が汚職容疑で拘束された。
村長の解放を求め、村人たちは再び立ち上がった。村人の多くが、国営テレビで放送された林村長の「自白」は強要されたもので、容疑はでっち上げだと主張した。
抗議活動は数カ月続いたが、数百人規模の治安部隊がゴム弾や催涙ガスを発射して制圧に動いた。さらに、被害者や目撃者によると、村人は警棒で殴られ、抗議活動はねじ伏せられた。
昨年12月、烏坎村を管轄する海豊県の人民法院は、違法な集会や交通妨害、虚偽情報の流布などの容疑で、村民9人に対し2年から9年の実刑判決を言い渡した。同法院のウェブサイトが明らかにした。
ロイターは海豊県および烏坎村を管轄する陸豊市にコメントを求めたが、現時点で回答はない。