日本では、なぜ性被害者の肩身が狭いのか ジャーナリスト伊藤詩織氏に聞く

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──2度記者会見され、捜査や司法システムの改正に加え、社会の意識変革を訴えられました。

まずは教育の問題があると思います。南アフリカで育った同僚は子どもの頃、他人に触られたくない箇所、たとえば胸は赤とか信号の色に例えた歌を教わったそうです。自分にとってそこが赤ならすぐ逃げる、すぐ周囲の大人に知らせなさいと。幼い頃、私も痴漢に遭ってすごく混乱した経験がある。何か異常なことが起きている、でもそれが何なのかわからない。だから子どものうちから、性被害に遭いそうになったらどうしたらいいか、判断できる教育をしておかないと自分で自分を守れなくなる。

あなたは一人ではないと伝えたい

──日本は性暴力へのタブー視や偏見がまだ根強いですね。

『Black Box』(文藝春秋/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そうした風潮の中では何も話せませんよね。被害者なのにキズものになったとか、お嫁に行けなくなるから誰にも言うなとか、人としての価値が下がったかのような考え方は間違っていると思います。そこを変えないと、「助けて」という言葉を発することができない社会になってしまう。だから私も、性暴力被害について話せる、話すことが悪いことじゃないと訴えたくて会見し、本も書きました。被害者に対する批判や揶揄、タブー視する社会に負けてしまってはそれこそ悪い例になってしまうと思ったのです。

レイプは魂の殺人です。同じ体験をした人、苦しむ人を支えている人に、あなたは一人ではないと伝えたい。誰かが私と同じような経験をし、それが自分の大切な人だったりしたら、行動を起こさなかった私自身を激しく責めたでしょう。その一点がこれまで顔と名前を出してお話ししてきた原動力です。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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