EV普及を阻む「コバルト不足」は解決できるか 新たな産出地域や技術革新が必要だ

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性能向上も著しい。シボレー「ボルト」は1回の充電で385キロメートルの走行が可能だ。2011年発売の初期型日産リーフに乗っていた人はバッテリーがすぐにダメになることに不満を抱いていたが、最新のバッテリーは10万マイル(16万キロメートル)の寿命を達成している。

できすぎた話だとの批判は確かにある。これだけのEVを生産するには現在の採掘量の100倍のコバルトが必要だ。さらに、コバルトは銅やニッケルの副産物として採掘されている。つまり、銅やニッケルの需要が伴わなければ、価格はハネ上がる。しかも、その65%はコンゴ民主共和国で産出されているのだ。資源争奪戦による内戦で600万人もの命が奪われてきた、あのコンゴである。

「コバルトを使わない」EVの研究も

問題を解決するには、新たな供給源を開拓する必要がある。英コバルト・デベロップメント・インスティテュートによれば、100年分の需要を賄えるだけのコバルトが地中に眠っているという。その多くは現在の市況と技術では採算が合わず採掘不能だが、市況が上昇し、採掘技術が進歩すれば、取り出せるコバルトの量は増える。

バッテリーに使用するコバルトの量を減らすことができれば、それも解決策になる。コバルトは以前、リチウムイオン電池に使われる材料の3分の1を占めていたが、最新の日産リーフでは1割まで使用量が低下している。

もう一つの解決策は、コバルトを使用しない高性能バッテリーを開発することだ。たとえば、米テスラはパナソニック(EV用バッテリーで4割の世界シェア)からリチウムイオン電池を調達している。だが、そのテスラは究極的にはコバルトを使用しないバッテリーが必要と考えており、すでに世界中の企業が実験を進めている。

私としては、科学者やエンジニアだけでなく、そうした企業の開発力にも賭けてみたい。ヘッドライトの先には、巨大なビジネスチャンスが見えているのだから。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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