マラウィ、避難民35万人の厳しすぎる未来 イスラム武力衝突は現地に深い傷跡を残した

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避難先からマラウィに戻って雑貨店を再開した女性(筆者撮影)

ちょうどこの頃、避難先からマラウィに戻ってサリサリ(雑貨店)を再開したクスナ・マカランドゥンさん(47歳)は「菓子やたばこ、洗剤などを売っていますが、住民がみな帰ってきたわけではないので、商売はさっぱりです」。事件については「ただ悲しいだけ。同じイスラム教徒、同じマラナオ人なのに、どうしてこんなことをしたのか……。間違った思想や考え方に毒されてしまったら、この町はどうなるのか、若い人たちの未来はどうなってしまうのか不安でなりません」と表情を曇らせた。

マラウィ市街では現在、陸軍工兵隊が不発弾処理や瓦礫(がれき)の一部撤去を行っている。フィリピン政府は当面の復興予算として150億ペソ(約320億円)を見込み、関係省庁や政府軍で構成する復興タスクフォースがニーズ調査と復興計画策定を担うが、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は「少なくとも500億ペソ(約1050億円)は必要だ」と発言している。

マラウィ復興プロジェクトの行方

イスラム過激派の指名手配写真が掲げられた政府軍の検問所。戦闘終結で兵士たちは緊張が解けた様子だった(筆者撮影)

マラウィ復興はフィリピン政府単独ではなく、日本を含む先進援助国や国際機関による“国際プロジェクト”である。すでに水面下の折衝が始まっており、国連、世界銀行、アジア開発銀行を中心に米国、オーストラリア、欧州連合(EU)などの復興支援資金を一括して管理・運用するプールファンドを設立する方向で調整が進む見通しだ。

ドゥテルテ大統領は事件終結直後の10月29~31日に来日し、安倍晋三首相と首脳会談を行った。安倍首相はマラウィおよび周辺地域の復興を最大限支援することを表明したが、日本としては資金協力に留まらず、国際協力機構(JICA)を通じて都市開発計画、インフラ整備など得意分野で独自性のある貢献を打ち出したいところだ。

もともとマラウィは道路や給水など社会インフラ整備が立ち遅れていたこともあり、現地では「単なる復旧・復興ではなく、本格的な再開発を通じてマラウィを再生したい」という声が聞かれる。日本の技術力やノウハウが生かされる場面は少なくない。

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