年収300万円「非常勤講師」が苦しむ常勤の壁

20年で100以上の大学の公募に応募したが…

ジロウさんは常勤の大学教員を目指して就職活動を続けている(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

 

この連載の一覧はこちら

秋の深まりは慌ただしく、そして唐突だった。前日までの陽気から一転、冷気を含んだ雨が、夏の名残をかき消したその日、JRの駅ホームのベンチでたたずむジロウさん(55歳、仮名)の姿があった。ディスカウントショップで買ったという紺色のジャケット。いつも重たいショルダーバッグをかける左肩部分が白く毛羽立っている。おもむろにバッグからおかかのコンビニおにぎりとスポーツドリンクを取り出した。これがこの日の昼食だという。

「時々、隣で女子高生たちもお昼ご飯を食べています。そんなときは、“なんなの?このおじさん”という視線を感じます」

任期付き教授から非常勤講師へ

ジロウさんは1年前まで、地方にある私大の任期付き教授だった。その後、大学での職を得ることができず、現在は、東京都内の私大と関東近郊の専門学校で非常勤講師として勤める傍ら、子ども向け福祉施設の指導員や高齢者施設の夜間受付などの仕事をかけ持ちしている。500万円以上あった年収は激減。今ではすべての仕事を合わせても300万円に届かない。

夜間受付の勤務を終えて深夜に帰宅した翌日に1時限目の授業が入っているときは、朝6時に出勤しなくてはならない。職場間の移動には2時間近くかかることもある。しかし、仕事によっては交通費も出ない。心身はもちろん、時間的にも経済的にも余裕はなく、昼食は駅のホームでおにぎり1個を食べるのが精いっぱいだ。

次ページ大半の採用が出来レースに思える
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 赤木智弘のゲーム一刀両断
  • 御社のオタクを紹介してください
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
新型肺炎の「致死率」<br>武漢だけ突出する理由

新型肺炎による死亡者は、湖北省、とくに武漢に集中しており、致死率は他の省を圧倒しています。この理由と背景は? 本誌デジタル版では、現地から果敢な報道を続ける中国「財新」特約の連載「疫病都市」を配信しています。