年収300万円「非常勤講師」が苦しむ常勤の壁 20年で100以上の大学の公募に応募したが…

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ジロウさんはこの20年間で100以上の大学の公募に応募してきたが、採用されたのはわずか5校ほど。採用の過程が不透明なことが、どうにも納得できないと憤る。

「大半が出来レース。公募の段階ですでに合格者が決まっているとしか思えないことがありました」

ある私大では、書類選考を通過し、事務担当者から面接日を指定された直後に担当教授から電話があり、「ご辞退いただけないでしょうか」と頼まれた。納得できずに食い下がると、すでに合格者が決まっていると打ち明けられた。

また、別の私大では、面接までこぎ着けたが、不合格。後になってその大学に勤める知人から「学部長の推薦を受けた人が選ばれた」と教えられた。論文や書籍などの執筆件数では断トツで勝っているのに、教授らと面識のある10歳以上年下の若手研究者にポストを奪われたこともある。

試験を受けても合否の連絡が来ないこともあったという。ある有名私大では、ジロウさんから何度も問い合わせをした結果、ようやく不合格と告げられたが、なぜか不合格通知は出せないと言われた。また、別の大学では採用試験から半年近く過ぎても合否が判明しないので、業を煮やして文部科学省を通して問い合わせたところ、ようやく走り書きのような手書きの不合格通知が届いた。

今年に入ってからも、ある地方の私大の公募の面接を受けた。このときは、模擬授業の手応えもよく、担当者からは業務内容や給与など採用条件について詳しい説明を受けたという。ジロウさんは「(担当者からは)“授業の時間割は、先生のご都合によって組み替えることもできます”とも言われました。十中八九、合格したと思いました」と振り返る。しかし、結果は不合格。理由はわからない。

研究業績を積んできたという自負がある

ジロウさんの専門は児童福祉で、共著なども合わせると20冊近い著作がある。フィールドワークにも積極的に携わり、児童虐待に関するユニークなアンケート調査を行った際には、テレビ局や新聞社から取材を受けたこともあるという。

相当の研究業績を積んできたという自負のあるジロウさんは「(選考の基準が)実力主義じゃないんです。大学も経費削減を迫られているので、(人件費が低くて済む)若手を雇うという判断はある程度理解できますが、こんなことばかりしていると教員の質は下がる一方だと思います」と訴え、その証拠として、ここ数年、大学教員によるアカデミックハラスメントをめぐる裁判ざたや懲戒処分が相次いでいることを指摘した。

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