中国「違法ワクチン」、幼児の体に起きた悲劇 人命軽視、ずさんすぎる薬品行政の実態

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「山東違法ワクチン事件」のワクチンが流通した時期に予防接種を受け、副反応とみられる症状が出ている子どもがいた。龐の倉庫があった済南市から約80キロ離れた泰安市。そこにある大学病院を私は訪れた。

マッサージ治療を受けてきたという張梓涵ちゃん(3歳、以下年齢はすべて取材当時)は全身麻痺状態。母の李倩倩さん(27歳)に赤ん坊にように抱えられていた。首は座っていないし、2つの瞳は真ん中に寄って、焦点が合っているようには見えない。

「少しはよくなりました。以前は治療の後、笑えもしませんでした」。そう話す李さんの視線を追って、梓涵ちゃんの顔をのぞき込むと、小さな口がニッと横に伸びた。確かに笑ったように見えなくもなかった。

3種混合ワクチン、HIB、ポリオの3種類のワクチンを打った直後に嘔吐や発熱が始まった梓涵ちゃん

梓涵ちゃんは、2013年の5月生まれ。生後3カ月を過ぎたころの8月、予防接種を受けた。打ったのは3種混合ワクチン、HIB、ポリオの3種類のワクチン。すると直後に嘔吐や発熱が始まり、さらに1週間、昏睡が続いたという。一命は取り止めたものの、3歳になる今、話すことも自分で食べることもできない。

たまたま発病時期が一致した?

李さんは娘の症状はワクチンの接種が原因だと考えた。だが、それに対する地元の衛生部門の対応は極めていいかげんだったという。李さんはそのときの様子を次のように説明した。

「いわゆる“専門家”たちがレストランに集まり診断しました。子どもの足をたたいたりして、これはワクチンが原因ではないと。診断書に誰も署名せず、偶然の反応と。偶然とはどういう意味と聞いたら、『たまたま(発病時期が)一致した』と」

じゃあ、ワクチンと関係あると認めたようなものではないですか、と尋ねると、李さんは続けた。「彼らは偶然だと言いました。『子どもの身体にもともと悪いところがあって、注射を打ったからそれを刺激した。それで症状が現れた』と」。

その"専門家"たちは、この診断だけでワクチンの副反応ではないと結論を出したというのだ。病気がワクチンの副反応によるものと認定されなければ、補償も受けられない。

「どうして、何人かの"専門家"だけで子どもの将来を決められるの。しかもこれから食事をしようというときに、子どもをちょっと見て慌てて『ちがう』という結論をでっちあげて、その後手を洗って食事を始めたのですよ。何の保証もないし、将来はどうすればいいの。私たち親が死んでしまったら、この子はいったいどうやって生きていけばいいの……」

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