中国「違法ワクチン」、幼児の体に起きた悲劇 人命軽視、ずさんすぎる薬品行政の実態
同じ山東省に住む別の家族も、やはり息子に問題のワクチンが使われたのではないかと疑っていた。
菏沢市に住む、郭林さん(33歳)一家である。自宅を訪ねると、夫妻と4歳の息子、東昇くんがそろって出迎えてくれた。東昇くんの症状はだいぶ改善したらしい。顔をのぞき込むと斜視が残っているのがわかったが、それを除けば、外見からわかる症状はなかった。
なぜ私の子どもだけにこんなことが!
リビングに通されると、東昇くんの母親の李紅香さん(34歳)が一気に語り出し、同時に泣き出した。
「私は母の資格がないと感じました。ほかの子どもはワクチンを打っても大丈夫なのに、なぜ私の子どもだけにこんなことが起きたのか、と自分を責めてばかりいました」
東昇くんが予防接種を受けたのは去年3月。その直後、全身麻痺が続き一時失明したという。その後、治療を受けて視力は回復したというが、前述のとおり斜視は残っている。右足に力が入らないなどの症状も続いているという。
元気盛りの東昇くんは、裸足で部屋の中を動き回っていたが、よく見ると確かにすり足のような歩き方をしていた。時折、ひざから折れてふらふらっと体勢を崩していた。
ただ、それ以上に目立ったのは、落ち着きのなさと情緒の不安定さだ。両親が私と話をしている最中も、大人しく遊んでいたかと思えば、突然、声の限りに叫び出したり、親にまとわりついて何かをせがんで急に泣き出したりと、むき出しの感情が行動に結びついていた。
東昇くんが打ったのは、おたふく風邪と麻疹の2種類。郭さんは、実際に打ったワクチンのアンプルと外箱をたまたま手元に残しており、それを見せてくれた。おたふく風邪のワクチンの箱には、笑顔をモチーフにしたようなピンクの丸がデザインされていたが、「山東違法ワクチン事件」のニュースに流れた押収物の映像にも、同じデザインの箱が写っていた。
アンプルのラベルの出荷日は2014年の4月2日と記されているように見える。龐の犯行期間中である。
郭さんにはさらに思い当たる節があった。
「(接種の際)ワクチンを引き出しから取り出していました。冷蔵庫から出したのではありませんでした」
その事実は、龐のワクチンが冷蔵保存されていなかったという点と符合する。郭さんの疑いは強まる一方だ。
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