中国「違法ワクチン」、幼児の体に起きた悲劇 人命軽視、ずさんすぎる薬品行政の実態

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中には「死亡案件」と手書きされている封筒も

それは陳氏が保管してきた、ワクチンの副反応と疑わしき症状が出た患者たちの資料だった。中には「死亡案件」と手書きされている封筒もある。封筒の中身を出してみると、診断書や子どもの接種手帳なども入っていた。疑惑を告発した陳氏の元には、被害者からの多数の情報が寄せられたのだ。

「200以上の家庭の資料を受け取りました。でもすべては回れませんでした」

陳氏は残念そうに当時を振り返る。

新聞は、この中から高温に晒されたワクチンとの関係の疑いがもたれる15人の患者を取り上げた。これに対し、衛生省はその15人と高温に晒されたワクチンは関係なかったという調査結果を発表し、一連の疑惑について、「ワクチンの管理には問題があったものの、安全性に問題はなかった」と結論づけた。しかし、陳氏はこの結論に、疑問を投げかけている。

鑑定を行っていないから、証拠はない

――衛生省は、健康被害の患者と問題のワクチンと関係はなかったと発表していますが、その根拠は何ですか。

「根拠はありません。鑑定を行っていないからです。官僚が関係ないと言っているだけで、鑑定によって関係はない、と言ってはいないのです。よく知らない人がやって来て子どもを触るだけで帰ってしまった。それが鑑定と言えますか?」

この山西省の事件でも、当該のワクチンが誰にどのように使われたか追求されはしなかった。冷蔵保存せずにワクチンを扱っていた業者は、刑事罰に問われなかった。「山西省のワクチン事件は結論が出ないまま終わってしまいました。誰も批判されなかったし誰も責任を取りませんでした」。

陳氏は怒りを込めて言う。「山西省の事件がきちんと解決できていれば、山東省の事件は起きなかったはずです」。

今回取り上げた2つの家庭は、いずれも両親がわざわざ子どもを連れて、予防接種に行った。その結果、健康を願って打ったはずのワクチンが、わが子をむしばんでしまったのではないかと自分を責めている。

原因は知らされないが、わが子が障害を抱えたという結果だけは存在している。

先に取り上げた李倩倩さんは、全身麻痺になった3歳の娘を抱き、涙を流しならこう訴えた。

「子どもが障害者になっても死んでしまっても怖くはありません。いちばん怖いのは、健康な子がワクチンを打ってこうなってしまったのに、何の説明もないことです」

宮崎 紀秀 ジャーナリスト

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みやざき のりひで / Norihide Miyazaki

日本テレビ報道局、社会部警視庁担当記者、外報部デスク、中国総局長などを経て現在はジャーナリストとして北京在住。主に「バンキシャ!」「ミヤネ屋」「ウェークアップ!ぷらす」など日本テレビ系列で放送する報道番組にコンテンツを提供。中国がらみのルポを得意とする。

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