もし、どうしても心配なら、「そうは言ってもやらないわけにいかないから、今のうちに半分だけでもやっておく?」など、ハードルを下げて促してもいいかもしれません。はじめに共感的な会話が十分なされていれば、子どもも素直な気持ちで受け入れやすくなります。
とにかく、日頃から「まず共感」を大事にしてほしいのです。アドバイスや指導など自分が言いたいことはその後です。そのようにしていれば、子どもは親を信頼するようになります。「お母さん・お父さんは話を聞いてくれる。私のことをわかってくれる。私は認めてもらえている。大切にされている。愛されている」という気持ちを持つことができます。これがすべてであり、これがないところでは、どんな指導もしつけも教育も無意味です。
頑張るエネルギーの源になるもの
実は、このようなよい親子関係をつくることは、親たちが思っている以上に大切です。共感を土台にしたよい親子関係ができると、子どもは元気が出てきて、勉強でも運動でも頑張るエネルギーが湧いてきます。また、心が満たされるので、きょうだいにも友達にも優しく親切な対応ができるようになります。そして、大好きな親に心配をかけるような危険なことや悪いことはできなくなります。
反対に、親子関係が悪化して、子どもが「私は認めてもらえていない。あまり大切にされてない。愛されていないんだ」と感じている状態だとどうなるでしょう? 頑張るエネルギーなど湧いてきませんし、兄弟や友だちとよい関係を築くことも難しくなってしまいます。さらに悪化すると、「どうせ私なんかどうなってもいいんだ」という自暴自棄の気持ちすら出てきてしまうこともあります。こうなると、心のブレーキが壊れて非行に走りやすくなるということもあります。
子どもたちは、大人になっていく過程で、非常に際どい岐路に立つことがあります。たとえば、友達に喫煙を誘われる、店で欲しいものを見つけて万引きの衝動に駆られる、みんなであいつをいじめようと誘われる、スマホの出会い系サイトに興味を持つなどです。
そのとき、よい親子関係ができていれば、「大好きな親に心配かけたくない。困らせたくない」という気持ちで踏みとどまることができるかもしれません。反対に、親子関係が悪化している場合、「あんなやつら、心配かけてもいいよ。心配するか見てみたい。困らせてやれ」という気持ちが出てしまい踏みとどまれなくなります。
私は少年鑑別所の職員が書いた本を読んだことがありますが、次のようなことが書かれていました。
「少年鑑別所の子どもたちに親のことを聞いてみると、『うちの親は話にならない』『何を言ってもムダ』『まったく聞く耳持たないから、何も言う気にならない』などと答える子が多い」
これは、つまり、親たちに共感の姿勢がなかったということです。反対に、「○○しなきゃダメだろ。なんで○○しないんだ。そんなことじゃダメだ。何度言ったらできるんだ。言い訳しないでまず謝りなさい」などの否定的な言葉が多かったのだと思います。親たちはみんなわが子を愛する気持ちはあるのですが、指導やしつけが前面に出てしまうと、こういう否定的な言葉でしかり続けてしまうことが多くなります。
共感の言葉は人間関係をよくする究極の言葉です。職場でも家庭でもあなたの周りの人に「大変だね」という言葉をかけてあげてください。人間はみんな大変でやっと生きている人がほとんどです。「大変だね」と言ってもらえるだけで少しは救われます。その人の力になりますし、同時にあなたとその人との人間関係は間違いなくよくなります。
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