丸亀製麺の創始者が惚れた「晩杯屋」の稼ぎ方 客単価1300~1500円の超コスパ立ち飲み屋

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一方、この時期、金子は独立資金を貯めるためにアルバイトのほかに、夜は運送会社の仕分けのアルバイトを夜中までするなど、年中休みなく働き月収70万円稼ぎ、独立資金500万円を短期間で貯めた。独立の準備ができると最後に立ち飲みの最高峰をゆく、赤羽の「いこい本店」に頼み込んで短期間修業をさせてもらった。

居酒屋業界に「晩杯屋ショック」を巻き起こす

武蔵小山本店の外観

こうして金子はリーマンショックの起こった2008年9月、自衛隊の先輩と共に晩杯屋を運営するアクティブソースを設立。2009年8月、「立呑み晩杯屋 武蔵小山本店」(4坪、家賃9万円)をスタートした。狭い店舗で客が7~8人も入ればいっぱいになった。1日10回転することもあった。

晩杯屋はヒト・モノ・カネの経営資源に恵まれていたわけではなく、当初は資金を貯めながら出店した。そのため2号店の「立呑み晩杯屋 大井町店」を開店したのは2012年3月のことだった。都心部に出てきたこともあり大井町店は居酒屋業界に「晩杯屋ショック」を巻き起こす。

2013年、2014年と2店舗ずつ出店、合計6店舗まで拡大した。金子はこの時期に晩杯屋の将来に自信を持ち、2015年には京浜急行の大森海岸駅から徒歩7分の賃貸ビル1階に、120坪の自社セントラルキッチン(CK)を開設、本社も3階に移転した。仕入れた鮮魚類や食材などを一括して1次加工し、晩杯屋各店に配送する仕組みが始動したことで、金子は創業7年目の2016年には過去最高の14店を出店する。金子は株式上場を視野に入れ、「2019年200店舗展開」を掲げた。

トリドールHD社長の粟田貴也さん

金子は自社の価値を知るためにM&A仲介業者に登録した。このM&A仲介業者がトリドールHD社長の粟田との仲をつないだ。粟田は今年5月ごろ、同仲介業者を介し、誠意を尽くして晩杯屋の買収を申し入れた。金子は打ち明ける。

「粟田さんは当社の経営状況のことをよくご存じでした。晩杯屋を非常に高く評価し、創業者である私の感性や思いを尊重したうえで、当社の成長を支援したいと申し出られました。当社はまだ知名度の低い中小企業であり、実際はヒト・モノ・カネの経営資源でもがき苦しんできました。私自身も経営に頭を悩ませることが多かったのです。また鮮魚はスケールメリットの出しにくい食材です。

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