イスラム系少数民族ロヒンギャが直面する人道危機によって、ミャンマーの民主化イメージは砕け散った。事実上の指導者でノーベル平和賞の受賞者、アウンサンスーチー氏の名声は傷つき、ASEAN(東南アジア諸国連合)や国連の危機対応能力にも疑問符がついた。
だが、問題解決の可能性は残されている。そのためには、以下の5段階の措置を遅滞なく進めなければならない。
殺戮と虐殺行為をやめよ
まずは、とにかく殺戮(さつりく)と残虐行為を止めることだ。軍はロヒンギャを国外へ追いやることを目的に民族浄化作戦を継続している。これ以上の流血は止めねばならない。
これを実現するにはロヒンギャの過激派を封じ込める必要がある。西側諸国で広く語られていることとは反対に、軍は挑発されたのだ。ロヒンギャ武装集団が治安維持施設に攻撃を仕掛けたのである。
もちろん、軍の報復が異常に大規模だったのは問題だ。「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)の襲撃にミャンマー軍は焦土作戦で応じ、約3000人を殺害。軍兵士はロヒンギャの村を焼き払い、レイプを行い、イスラム寺院を破壊、多数の難民を生み出した。
一方、スーチー氏は倫理的権威を行使できずにいる。警察を支配下に置く独立した軍部と、仏教徒が大多数を占める国民との間で板挟みになっているのだ。圧倒的に仏教徒が多いミャンマーでは反イスラムの偏見が根強い。
スーチー政権が、西側諸国や国連から発せられる理想主義的な声明に不快感を抱いているのは確かだ。ロヒンギャ過激派は海外のイスラム系テロ組織と長期にわたる関係を築いており、その中には「イスラム国」(IS)も含まれる。シンクタンクの国際危機グループによれば、ARSAはサウジアラビアを拠点とするテロ組織によって指揮されているという。
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