フランスのマクロン大統領が9月下旬にパリのソルボンヌ大学で行った演説は、欧州の将来ビジョンを描く野心的なものだった。欧州を覆う排外主義に対抗する方法を示したからである。
演説は、数多くの危機に直面している欧州連合(EU)の加盟国に協力を呼びかけるものとして歓迎された。だが、ユーロ圏経済の改革という難題については、満足のいく案を同氏は示せなかった。
慎重姿勢を崩さない加盟国のリーダー、とりわけドイツのメルケル首相を説得するのに、マクロン氏は苦労することになるだろう。9月の総選挙での苦戦によって、メルケル氏は自由に行動できる余地が狭まってしまったからだ。
とはいえ、EU改革を訴えるマクロン氏の主張は力強く、前向きなものだった。
今度は、ドイツが応える番である。マクロン氏の計画が失敗に終われば、欧州は排外主義に屈することになってもおかしくない。そうなれば、ドイツにとっても大打撃だろう。ドイツが経済的に成功し、政治的に独自の存在感を持つことができているのは、EUがしっかりと機能しているからだ。
マクロン氏ほど、親ドイツ的な仏大統領は考えられない。同氏は雇用慣行の改革という難題に取り組み、ドイツ流の緊縮財政も発表した。同氏の提案に本気で応じなかったら、ドイツは歴史的なミスを犯すことになるだろう。
しかし残念ながら、ドイツの内政状況は複雑化してしまった。政治的に弱体化したメルケル氏は、極めて厄介な連立政権づくりを模索する必要がある。親EUでマクロン演説を歓迎した緑の党と、反EUを掲げ同演説に敵意を示した自由民主党(FDP)を、連立に組み入れねばならないからだ。
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