日本で報じられる世界の姿を鵜呑みにするな そこにバイアスがかかっているかもしれない
“右傾化”に結びつく既存の政治への忌避感
「フランスで取材していると、これまでの右派や左派といった打ち出し方より、今解決を求められている問題に対して、それを改善するための政策をどれだけ考え、実際に動いてくれるかどうかが、候補者を選ぶためのポイント」「その多くの人の感覚を理解しないで、メディアの側は今までの枠組みの中で報道し続けている」(増田氏)
これは、アメリカ大統領選挙でトランプ氏の支持者たち、そして民主党の大統領候補の座を最後までヒラリー・クリントン氏と争ったバーニー・サンダース氏の支持者たちがよく口にした「既存の政治家による手垢のついた政治はもういらない」という言葉と重なる。この意識は、極右への支持にもつながり、既存の政治勢力への否定にもつながるのだ。
フランス大統領選挙も、この有権者たちの考え方が大きく働いた。その結果、決選投票には、新しい政治活動を試みたエマニュエル・マクロン氏と極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏が残り、旧来の右派(共和党)、左派(社会党)の候補者は決選投票に残ることができなかった。有権者たちの意識をすくいとり、うまく応じることができない政治、報じることができなかったメディア、これらが今、大きな問題になっている。
この流れは日本も含め世界的なものだろう。目の前で起こっている問題に既存の政治は応じていない。既存のメディアもうまく対応できていない。経済や情報、人や物の流れはグローバル化して、それぞれの動きは活発で、恩恵と弊害がある。その流れを止めることは今さら不可能で、一方、国家という枠組みは現存している。