日本も「右傾化した」と世界から見られている 世界の一面を過度に煽る情報に踊らされるな
“右傾化”報道をどう捉えるか
2017年のヨーロッパは「選挙イヤー」だ。すでに実施された選挙も含め、3月にオランダの下院選挙、4月と5月にはフランスの大統領選挙が行われ、6月はイギリスの総選挙、フランスの国民議会(下院)選挙、9月にドイツの総選挙という予定になっている。
3月に行われたオランダの下院選挙は、与党の自由民主党が、極右政党・自由党に勝利した。フランスの大統領選挙は、5月7日に決選投票が行われ、中道派の前経済大臣のエマニュエル・マクロン氏が、極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏を抑え当選。この事実を日本のメディアがどう伝えていたかを少し思い起こしてほしい。
たとえばオランダの選挙は、「極右政党の自由党が第二党に躍進」と伝えていたか。それとも「与党の自由民主党が極右政党・自由党の勢いに待ったをかけた」と伝えられていたか。どちらの向きから報道されていただろうか。
オランダは選挙の結果、与党・自由民主党が改選前の議席40から33で第一党を維持したものの、極右・自由党が改選前の議席12を20へ伸ばし、第二党となった。確かに与党が議席を減らして、自由党が議席を増やした。極右政党が票を集めたことは事実だ。
他政党の状況も見てみよう。キリスト教民主勢力が13から19へ、民主66が12から19へ、グリーン・レフトが4から14へと、それぞれ改選前から議席をかなり伸ばしている。与党に対する不満から他の政党へと流れたとの見方も成り立つだろう。それが極右政党への票にも含まれていたともいえる。極右政党だけが議席数を伸ばしたわけではないのだ。
このニュースにもう少し踏み込んでいかないと、“右傾化”と呼ばれる、それぞれの国や地域で起こっていることが見えてこない。「フェイクニュース」と呼ばれる真偽が定かではない情報が行き交う今こそ、事実を見据えて、「伝える側も情報を受け取る側も冷静になる必要がある」(池上氏)のだ。