日本で報じられる世界の姿を鵜呑みにするな そこにバイアスがかかっているかもしれない

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目の前で起こっている問題をどうやって捉えるかも大きなカギだ。しかし私たちがそれをどう捉えるかの前に、私たちが問題を考えるためのソースを得るための報道の現状にも気をつけなくてはならない。

「取材をしてきて、行く前に言われている状況と実際の現場が一致するなんてことはほとんどありませんでした。報道されていることと、現実とはいつも少しずつズレています」と、増田氏が述べるように、日本で報道される世界のニュースは、日本の視聴者が抱いている、もしくは報道する側が、視聴者が抱いていると想像する現実とはズレた視点でニュースを解釈して伝えていることも多い。

ステレオタイプの見方だけではダメ

『なぜ、世界は“右傾化”するのか?』(ポプラ社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

私たちの固定観念や、その固定観念に基づいて、こう報道したほうが日本ではより注目されるであろうというステレオタイプな報道が多いということだ。だから私たち自身が、「いろいろな情報に触れて、まずはステレオタイプのものの見方だけではダメなんだということを知ること」(池上氏)が重要になってくる。

同じように見える状況がある一方で、それぞれの歴史的経緯や地域の情勢、宗教や経済状況も違っているという事実、そして伝えられ方にもバイアスがかかっていることを忘れてはならない。「実際に起こっていることをきちんと伝えようとすること、知ろうとすることが今の社会ではとても重要」(池上氏)になっているのだ。

(文責:小山 晃)

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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増田 ユリヤ ジャーナリスト

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ますだ ゆりや / Yuriya Masuda

1964年、神奈川県生まれ。27年にわたり、高校で世界史・日本史・現代社会を教えながら、NHKラジオ・テレビのリポーターを務めた。テレビ朝日系列「大下容子ワイド!スクランブル」でコメンテーターとして活躍。著書に『揺れる移民大国フランス』『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』など多数ある。また池上彰氏との共著に『歴史と宗教がわかる!世界の歩き方』などがある。「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」でもニュースや歴史をわかりやすく解説している。

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