日本で報じられる世界の姿を鵜呑みにするな

そこにバイアスがかかっているかもしれない

政治は国ごとに行われ(もちろん多国間の同意で動く政策もある)、富の再分配などの制度は国の政治が決める。社会制度の是正などは当然、国民が選挙という制度を通して向きを決める。グローバル化している経済によってもたらされる格差を、国の制度で改正するとなると、経済的な格差を感じている国民たちは、グローバル化からの撤退、自国を第一にという選択を求めることになる。それが既存の政治とは一線を画し、「古き良き伝統」をよしとして、移民や難民の流入の阻止や、自国第一主義を掲げる政治家や政党の支持へとつながっているのだ。

“右傾化”する世界に抗する力

トランプ大統領のアメリカ第一主義、フランスの国民戦線やオランダの自由党などの極右と呼ばれる政党の主張は、移民・難民の排除や、これまでの国際的な相互協力関係の見直し、たとえばEU離脱などを訴える点が特徴として挙げられる。

だが、前提となる彼らが否定しようとする現状、たとえば移民や難民の流入状況やその対応一つとっても国や地域によってさまざまだ。

「日本はいいわね、海で囲まれているから」。増田氏がフランスでの取材時に言われた言葉だ。日本は「周りが海だから、難民や移民が簡単には来られないだろうということ」(増田氏)だ。実際に日本の難民受け入れ数は、2014年に11人、2015年に27人、2016年は28人である。大きな批判を受けたトランプ氏の大統領令は、難民の受け入れを年間5万人以下に抑制するというものだった。はたして日本はトランプ氏の政策を非難できるのだろうか。

アメリカやヨーロッパの“右傾化”というとき、その背景にある社会状況を知らずに、私たちが決めつけていることも多い。それは日本社会を考えるきっかけでもあるのだ。

“右傾化”しているといわれている国や地域は、「その状況に反発する人たちがいるところも同じです。だからすぐに右傾化と単純に言えるかどうか。細かくそれぞれの状況を見ていかないといけない」と、増田氏は言う。問題があったとしても、同時にそれを正していこうという動きが現場にはあるのだ。

排外主義や自国中心を唱える動きや政党の躍進があれば、それに抗する人たちもいる。そしてその躍進を押しとどめるための方法の蓄積が社会にある。それがヨーロッパでの極右の勢いを抑える選挙結果につながっているのであろう。

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