9月末に行われた独総選挙の結果は、欧州連合(EU)に教訓をもたらした。EUの安定を支えてきたドイツでさえ、政治的分断と無縁ではなかったということだ。メルケル氏が首相として4期目を務めるのは間違いないが、同氏の新政権は弱体化しそうだ。
連立は制御不能
メルケル氏率いる中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)の得票率は33%。第一党の地位は守ったが、1949年以来、最悪の結果だ。中道左派の社会民主党(SPD)も20%強の得票率で、こちらも戦後最悪を記録。SPDはドイツで2番目の規模を持ち、メルケル前政権の連立与党だった。
一方で、ユーロ離脱、親ロシア、移民排斥を掲げるポピュリスト政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は12.6%を獲得。60年ぶりに極右政党が連邦議会に進出することになった。SPDは白旗を掲げ、野党として次期メルケル政権に対峙すると宣言している。
ドイツは、いわゆるジャマイカ連立となる見込みだ。CDU、緑の党、自由民主党(FDP)のイメージカラーがジャマイカの国旗と同じことから、そう呼ばれている。だが、各政党の外交スタンスは相いれないものであり、連立は制御不能に陥るだろう。
メルケル政権は、欧州が今まさに必要としている指導力を発揮できなくなるおそれがある。英国のEU離脱が控える中、新たなEU統合のモデル作りに向け、メルケル氏は仏マクロン大統領と緊密に協力するとみられる。だが、メルケル氏はすぐに動ける状況にはない。
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