同僚についてまさか!と自分で切り出したにもかかわらず、次の瞬間から先生の鋭い視線が周囲に向けられる。文章を読み進めていくと、さまざまな人たちが実にリアルに描かれており、女房図鑑を眺めている気分になる。しかも、誰かをほめたとしても、やはり少しばかりの意地悪さは忘れない。
たとえば小大輔という女房についての記述――。
次の標的となったのは…
見た目はそれほどゴージャスではなかったといわれている紫だが、それにしては相手を完全になめているような上から目線。他人の欠点を見逃さず、ここぞとばかりにメスを入れる。自信のなさの表れでもあったかもしれない。
髪の毛の美しさは命だった平安時代。自分の最大の魅力だった髪の毛が薄れてきたときっと心配していたはずの小大輔がこの文章を読んでどう反応したのだろうか。若いのに薄毛なんて、深刻だもの。それに、最後の「かたちは直すべきところなし」って、やっぱり外見以外は何かあったのだろうかと深読みしてしまう。
1回始まったら本音トークが止まらない。
次は大斎院選子の女房、中将の君に対して毒を吐く。大斎院選子様は57年間、円融・花山・一条・三条・後一条天皇の5代にわたり在職したスーパーマダムで、彼女が率いるサロンは、定子と彰子に並ぶぐらい豪華だ。
中将の君が誰かに宛てたプライベートな手紙を何とか手に入れた紫は、そこに書いてある彰子とその女房たちの悪口に怒り心頭。他人の手紙をこっそり読んで、その行為を堂々と日記で暴露していいのか!?とドキドキするが、盗み聞き、覗き見が日常茶飯事だった平安時代なので、それほど重要なことではないらしい。
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