巨大ホテルが「不動産事業」を売却するワケ

ヒルトンやアコーに続いてウィンダムも

こうした事業モデルは、1990~2000年代における不動産不況の苦い経験を経て確立された。ホテル会社が自社で不動産を所有・リース契約していると、景気拡大期には新規案件開発のために必要な多額の資金需要に追いつかないというジレンマがある。一方で、景気後退期には不動産所有に伴うリスクを直接受けて、最悪の場合はホテル会社そのものが債務超過に陥り、身売りせざるをえないケースもあった。

世界的な低金利を背景に、不動産価格も世界的に高水準で推移している。世界の観光市場が拡大するという予測もあり、主要市場のホテル資産は、過去最高水準に達している。大手ホテル各社による不動産事業の分社化は、こうした最高のタイミングで行われているのだ。

日本のホテル業界への影響は?

こうした動きは、日本のホテル業界にどのような影響を与えるのか。日系ホテル会社のビジネスモデルは、海外大手が主流とする「アセットライト」「フィー・フォー・サービス」型からは程遠い。

不動産を所有する会社とホテル運営会社の分離は進んでいるものの、両者間の契約は賃貸借契約が主流だ。その結果、ホテル運営会社のバランスシートにはリース負債が計上されるため、資産圧縮にはならず、所有会社に賃借料が支払われる。

この日本型モデルの問題は、ホテル会社の評価が、本業のホテル運営自体の巧拙ではなく、グループ会社の財務信用力により規定されてしまう点にある。

海外大手は、ミレニアル世代のような次世代顧客層をターゲットとしたライフスタイルブランドを開発して、差別化を図るなど本業のホテル運営そのものを進化させている。

日本のようなグループ会社の信用力に依存するビジネスモデルから新しい発想が生まれることは難しく、グローバル規模で信用力を得られるケースはまれだ。日系ホテル会社が海外で大手と互角に戦っていくためには、早期にアセットライト、フィー・フォー・サービス型への転換など、ビジネスモデルの見直しが必要かもしれない。

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