巨大ホテルが「不動産事業」を売却するワケ ヒルトンやアコーに続いてウィンダムも

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こうした分社化を進めている、大手ホテルのトップは、いずれも不動産投資やM&Aなどのホテル運営以外の分野で高度な経験を有するプロ経営者だ。

マリオットで非創業家として初めてトップに就いたアーン・ソレンソンCEOは、マリオット入社前には法律事務所でM&A専門の弁護士として活躍していた。ヒルトンのクリストファー・ナセッタCEOはホテル不動産投資信託(REIT)であるホスト・ホテルズ&リゾーツを含む、不動産投資業界での豊富な経歴を買われて入社している。

アコーのセバスチャン・バジンCEOも、米不動産投資大手コロニーキャピタルや投資銀行での数々の投資案件を成立させた経験がある。こうした手腕は最近、アコーによるフェアモント=ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル(FRHI)の買収にも垣間見ることができる。

こうした大手ホテルの多くは2000年代に入り上場している。投資家からの成長要求に応えるため、各社は新規案件の地道な開発という従来の手法に加え、運営件数(運営客室数)を急成長させるため、既存ホテルチェーンの買収・経営統合を進めているのだ。

こうした動きはホテル会社にとってもプラスだ。不動産事業(所有)を分社化し、売却することで得られるキャッシュフローで、コア事業であるホテル運営に集中したり、他社買収などを行ったりすることができる。

不動産不況で運営受託型モデルへ転換

ウェスティンホテル東京(目黒区)はスターウッドが運営。不動産は2008年からシンガポール政府投資公社が所有している

このことは、ホテル会社が所有する不動産を減らす「アセットライト」(asset light、資産圧縮)を進めることを意味している。さらに、不動産の所有者へホテルの運営サービスを提供し、対価を受け取る「フィー・フォー・サービス」(fee for service、運営受託)型のビジネスモデルにますます転換していくことをも意味する。

不動産投資は多額の資金を必要とするが、こうした「アセットライト」「フィー・フォー・サービス」型の事業はグローバル展開をしやすく、大手ホテル会社に適している事業モデルだ。

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