深謀?無謀?赤字上場ベンチャーの見極め方

マネーフォワードの上場が注目されるワケ

シバタ:米国にはこういうSaaS型ビジネスを手掛けるベンチャーがすごくたくさんあります。そしてそういう企業は総じて、赤字の最中にIPOするのですね。たとえばファイル管理ソフトを法人向けに展開しているBox(2015年1月米ニューヨーク証券取引所上場)なんかがそうです。

SaaSはどうしても、創業当初はマーケティングの費用が先行します。それを、売上高を伸ばしながら、長い期間をかけて回収していきます。リアルビジネスでもこういう傾向はありますが、その度合いがもっと顕著なのがSaaS。じゃあどの程度の赤字なら許容されるのか。もちろん無限に許容されるわけじゃありません。米国の投資家は、2つの要素を掛け合わせて判断しています。

VCが重視する「40%ルール」

シバタ:1つは売上高の成長率、もう1つは営業利益率。この合計が40%を超えればいい。たとえば売上高が前年同期比100%増、つまり倍増していれば、営業利益率はマイナス60%までOK。赤字でもいいんです。

逆に売上高の伸びが鈍化して20%しか成長していなければ、営業利益率は20%以上なければならない。これを「40%ルール」といいます。ルールといっても、上場市場の審査ルールではなくて、ベンチャーキャピタル(VC)などが使っている投資基準ですね。

尾原:マネーフォワードの場合、直近四半期(2017年3~5月期)の売上高成長率は99.7%、営業利益率はマイナス16%。直近の四半期では、さっきのルールの水準を大きく上回っている。

シバタ:はい。赤字の要因は主にマーケティングコストなのですが、さっきのルールからすると、無謀な投資をしているわけではないといえます。米国での上場だったら全然問題がない水準です。

尾原:40%ルールというのは、SaaSのビジネス展開に不可欠なマーケティング費用の回収期間をざっくり見るための指標であるわけですね。

シバタ:マネーフォワードの場合、企業向け会計ソフトの顧客コストを何カ月で回収できそうか。概算すると、大体8~12カ月で回収する感じです。これは米国のSaaS型企業と比べるとかなり健全です。

こういった、顧客1社の将来にわたる売上総額が顧客獲得等費用を上回ることを、「ユニットエコノミクス」が成立しているといいます。最近のVCが非常に重視している指標です。論理的にいえばユニットエコノミクスが成立するかぎり投資を続けたほうが、一時的な赤字は増えるとしても、将来の利益総額は上昇します。

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成長を確実にする組織の根幹を成すのが、研究開発と人事である。研究開発体制は2015年4月、各研究所に横串を通し、顧客起点の組織に生まれ変わらせた。人事制度もグローバル化がほぼ完了。踊り場から飛躍へ、日立の地固めの様相を追う。