「スピードゴルフ」は、全く新しいスポーツだ 利用者の若返りへゴルフ業界で新しい試み

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今大会の会場となったワンウェイゴルフクラブの加藤一夫総支配人は「通常営業で、ゴルフとスピードゴルフのお客様が共にプレーするのは難しい」と感想を述べる。プレースピードが違いすぎるので、ゴルフ場側が対応できないからだ。

スピードゴルフの専用日や専用コースを設けるという考えはあるが、1人で回る正式競技となると、プレー時間=コース占有時間は短いとはいえ、ゴルフ場側としては通常営業より収入が減ってしまうことも悩ましい。

スピードゴルフ自体のハードルも高い。ランニングが趣味でも、まったくのゴルフ初心者には難しく、反対に大のゴルフ好きでも、体力・走力に自信がなければ二の足を踏んでしまう。

通常のゴルフでは感じられない達成感

一方、活性化のヒントとなるのは、スピードゴルフの考え方だ。

今大会では通常のゴルフと同じように、4人1組で回るエンジョイ部門も行われた。平均スコア100というアベレージゴルファーの゙アラフィフ記者”が、こちらを体験してみた。

正式競技と異なり、エンジョイ部門では全員が打ち終わってから走り出す。以降も原則として、カップから遠いプレーヤーが打つのを待って走る。ほかのプレーヤーが打つ瞬間は止まるので、多少の休憩はできる。

通常のゴルフでは感じられない達成感がある(中央左が記者)(写真:ゴルフダイジェスト・オンライン)

それでも、走り続けるのはそうとうきつい。ひざや太ももだけでなく、クラブを持って走る腕が意外に疲れる。後半はふくらはぎがつりそうになり、走っているのか歩いているのかわからない状態だった。なんとか走り切れたのは、ほかのメンバーと励まし合ったからだ。

最後のパットを沈めた直後に倒れ込みそうになった。が、すがすがしさと達成感は通常のゴルフでは感じられないものだった。

記者は少しでも荷物を軽くするため、クラブはパターを含めて4本で回った。スコアは106で胸を張れたものではないが、普段と大して変わらない。

「素振りをしなくても、ラインを読まなくてもゴルフはできる」と石坂社長。つまり、スピードゴルフは、゙こうでなくてはいけない”というゴルフの常識から解き放たれるきっかけになるのだ。

ゴルフは道具にカネがかかるスポーツだが、クラブを減らせば費用は抑えられる。練習用バッグで事足りるので、電車でコースに行くことも容易だ。ゴルフへのハードルを間違いなく下げてくれるだろう。

ゴルフ用品メーカーにとっては痛いかもしれないが、大会に参加していたゴルフ用品メーカー社員は「プレー人口が増えてくれるほうがありがたい」と前向きだった。

ゴルフ場の運営へのヒントもありそうだ。わがチームのタイムは、1時間38分44秒だった。もう少しゆっくり、小走りしたとしても、2時間半で回れるだろう。

スピードゴルフの要素を取り入れれば、ゴルフ場の回転率を2倍近くにできる計算になる。安全確保やコース管理など解決しなくてはいけない課題が残るとはいえ、装置産業のゴルフ場の追加コストはあまりかからないので、プレー代引き下げ余地も出てくるはずだ。

まだまだスピードゴルフの知名度は低い。「エンジョイ部門」を含めて体験する機会をどう増やしていくか。市場縮小に危機感を抱くなら、業界を挙げて取り組んでもいいはずだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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