「スピードゴルフ」は、全く新しいスポーツだ 利用者の若返りへゴルフ業界で新しい試み

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縮小

SGSが127.23なのは「超絶すごい」。実は、松井選手は第1回大会から今大会まで4連覇を果たした日本のスピードゴルフ界の第一人者である。なお、今大会の参加69選手の平均は97打、71分46秒、SGS168.46だった。

優勝した松井選手。SGS127.23は「超絶すごい」(写真:ゴルフダイジェスト・オンライン)

ちなみに、世界記録は米国のクリストファー・スミスという人が出した65打、44分06秒のSGS:109.06。こちらは完全に想像の域を超えている。

今大会を主催するのは、インターネットのゴルフ総合サイト「GDO」を運営するゴルフダイジェスト・オンライン。同社は2014年に第1回大会を開催し、その後も各種イベントを開くなど、日本でスピードゴルフの普及に努めてきた。

日本スピードゴルフ協会会長でもある石坂信也社長は「新しいゴルフの楽しみ方を提案したい。ゴルフを身近に感じてもらい、ゴルフ人口の拡大と市場活性化につなげたい」とその狙いを語る。

20年でほぼ半減、近い将来にもう一段縮小

石坂社長が危機感を持つのも無理はない。ゴルフ市場(用品、ゴルフ場、練習場)は長期右肩下がり。1991年の約3兆円から2015年は1.3兆円にまで縮小してしまった(日本生産性本部刊「レジャー白書2016」より)。

市場縮小はゴルフに限った話ではない。1995年とその20年後の2015年の市場を比較すると、ゴルフは52%、スキー・スノーボードなど(用品、施設)は35%、テニス(用品、施設)が70%、スイミングは46%、ボウリングは37%と半減以下も珍しくない。

ゴルフ産業の関係者にとって、ほかのスポーツも厳しいことを知っても何の慰めにもならない。しかも、ゴルフ市場は近い将来にさらなる急縮小が予測される。

ゴルフ人口(コース利用者)に占める60代以上の割合は48.4%に達する(同白書)。ほかのスポーツよりも圧倒的に高い。ゴルフは「年寄りのスポーツ」なのだ。

数年前には、ゴルフ人口の中心を成す団塊の世代が65歳を迎えることで市場が急減する「2015年問題」が深刻に語られたが、割安な平日にゴルフ場へ行くプレーヤーが増えたため、底割れは起きなかった。だが、コア層が70代を超える近い将来、市場が一気に縮小することは容易に想像できる。

近年、業界でもゴルフ人口拡大への取り組み、特に若者へのアピールに力を入れている。またバブル期には平日でも3万円したプレー代は、バブル崩壊から四半世紀経った現在では平日なら昼食付き5000円台も珍しくないなど、多少は身近になってきた。

それでも「まだ料金が高い」「コースは遠く交通費もかさむ」「プレー時間が長い」「ドレスコードなどが堅苦しい」「年寄りのスポーツ」といったマイナスイメージの払拭には至っていない。

石坂社長が言うように、スピードゴルフはゴルフ人口拡大につながるか――。結論から言えば、課題は山積みだが活性化のヒントは間違いなくある。

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