ゴルフ界の雄「テーラーメイド」の不安な将来 アディダスがついに売却、再成長できるのか
世界第2位のスポーツメーカー、独アディダスは昨年5月、クラブやボールなどを扱う「テーラーメイド」など3ブランドからなるゴルフ用具事業を売却すると発表。しかし、なかなか相手が決まらないまま1年が過ぎ、今年5月10日にようやく売却先が発表された。相手は米国の投資会社「KPSキャピタル・パートナーズ」。同社の投資対象は未上場の製造業が中心である。
売却価格は4.25億ドル(約468億円)だという。アディダスのカスパー・ローステッドCEOは「テーラーメイドは、市場で非常に強いポジションを持ち、世界をリードするグローバル・ゴルフブランドだ」と評価。そして、「われわれは長期的戦略のもと、コアビジネスであるゴルフシューズやアパレルと、2大ブランド『アディダス』と(傘下の)『リーボック』に資源を集中する」と続けている。
ゴルフ用具業界の危うい将来性
だが、テーラーメイドといえば、ゴルフ用具では押しも押されもせぬトップブランドにほかならない。ゴルフ関連ビジネスの将来性を信じていれば、事業を手放すはずはないのだ。要は、アディダスにとって、クラブなどのゴルフ用具はもう稼げない分野だと見限ったのである。スポーツメーカーでは、世界トップのナイキもゴルフ用具からの撤退を昨夏に発表している。
なぜ、大手スポーツメーカーが相次いでゴルフ用具から撤退したのか。その大きな理由は、クラブに使用する素材や製造技術の進歩が、かなり行き着くところまで行ったことにある。クラブに新素材が使用されて飛距離がぐんぐん伸び、熱心なゴルファーが積極的に買い替えた時代は、過去のものになった。今はルールでクラブの反発係数0.830以下、ヘッド体積460cc以下、長さ48インチ以下という「飛ばなくする」ための規制がある。
そうしたことからも、新しいクラブを購入しても、ゴルフ最大の楽しみである飛びの差を実感しづらくなった。消耗品で頻繁に買い替えたり、買い足したりするシューズやアパレルに比べて、売れなかったり、在庫過多になるといったリスクが増え、商売としてのうまみがなくなってきたのだ。
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