ゴルフ界に激震「テーラーメイドはどこへ」 トップブランドがなぜ売りに出されるのか
ダスティン・ジョンソンが6月16日~19日に開催された第116回全米オープンで悲願のメジャー初優勝を遂げた。2位に3打差をつけた堂々の圧勝であった。途中、ルール問題から最後の最後まで優勝スコアは確定しなかったが、最終18番2打目をピンそば1mにつけてバーディーとし、優勝を揺るぎないものに。世界ランキングも3位に上がり、これまで以上に注目される選手となった。
さらに、その翌々週(6月30日~7月3日)に行われたWGCブリヂストン招待でも、最終日に逆転勝利をもぎ取った。そのダスティン・ジョンソンのキャップ正面のロゴにあるのは、ギア契約先の「TaylorMade(テーラーメイド)」。ジェイソン・デイなど数多くの強豪プロと契約しており、ゴルファーにとってはなじみのあるブランドである。
全米オープン開催前の5月、ゴルフ用品界に衝撃が走った。5月4日、テーラーメイドの親会社であるアディダス本社(ドイツ)が、ゴルフ部門(テーラーメイド、アダムス、アシュワース)を売却するというステートメントを発表したからだ。イギリスのEU離脱の衝撃は世界経済に大きな影響を及ぼしているが、アディダス本社によるテーラーメイド売却も、ゴルフ界に衝撃を与え、今後のゴルフ用品ビジネスの先行きに不安感を感じさせるのに十分だった。なんといっても、あのテーラーメイドが売りに出されたのである。
革新的なギアを生み出してきた歴史
テーラーメイドはゴルフ界に革新をもたらしたメーカーだ。ヘッド材料を木のパーシモンから金属へ変え、今日のチタンまでにつながる技術の道筋をつけたのは、ほかならぬ同社である。1979年にゲーリー・アダムスが創業。メタルドライバーを発明し、1980年にステンレス製のメタルドライバー「ピッツバーグパーシモン」を初めて世の中に送り出した。このときのヘッド体積は160㎤で、現在の通常のヘッドの1/3の大きさである。しかし、木を削っていたある意味工芸品の世界から、精度・品質を要求される工業用品の世界に大きくステップアップした。これ以降科学の目がゴルフクラブに入り、技術革新が急速に進み、ヘッド素材がカーボン、チタンへと革新されていく。
2004年には重心可変機能を備えた「R7」、2009年にロフト等の可変機能を備えた「R9」、2011年には新しい発想で白色の「R11」を出し、常に革新的なゴルフギアを生み出してきた。直近では「M1」「M2」がヒットしている。M1は全米オープンでダスティン・ジョンソンが使ったクラブ。2015年のテーラーメイドゴルフの売り上げは約500億円以上と推定され、ナンバーワンのクラブメーカーとなっている。それなのに売りに出されたのは、なぜなのか。
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