ゴルフ界の雄「テーラーメイド」の不安な将来 アディダスがついに売却、再成長できるのか
アディダスは、今年3月に2020年までの中期計画を発表。事業の「選択と集中」を進める中で、ゴルフブランドのテーラーメイドについては「売却交渉中」とだけ書かれていた。年次報告書を見ると、2016年のグループ全体の売上高は、前年比18%増の192.91億ユーロ(2兆3998億円)。一方で、ゴルフ部門の「テーラーメイド-アディダスゴルフ」は同1%減の8.92億ユーロ(1110億円)である。
ヒット商品がありながら、物足りない業績
しかも、ゴルフ部門の売上比率はアディダス全体の4.6%にすぎない。テーラーメイドのドライバー「M1」「M2」がヒットしていながら、この程度の売り上げ規模にとどまり、しかも前年比減というのは厳しい。アディダスがゴルフ用具事業の売却に踏み切ったのも無理ないことだ。
直近の2017年の第1四半期(1~3月)を見てみると、ゴルフ部門は2.94億ユーロ(366億円)で前年比7%伸長と健闘してはいる。だが、アディダス全体の第1四半期の売上高が56.71億ユーロ(7055億円)と、前年比18.9%の高成長を見せている中では、やはり物足りない数字だ。
アディダスのゴルフ事業は1997年にテーラーメイドを傘下に持つ仏サロモンを14億ドルで買収したのが始まりだ。その後、同社はゴルフ用具メーカーを相次いで買収。今回、テーラーメイドとともに売却したアシュワースとアダムスを含めると、買収に合計15.42億ドルを投じている。
アディダスのゴルフ用具3ブランドは、買収額の4分の1近い価格での売却が決まったが、約1年という期間を要したことからしても、買い手がなかなか付かなかったのではないか。年次報告書はゴルフ部門だけの利益は明らかにしていないが、ゴルフ部門を含む「その他のビジネス」というカテゴリーは利益が出ていない。
2011年に米フォーチュン・ブランズ社がゴルフボールで世界No.1のシェアを持つタイトリスト社を売却した価格は12億ドル(1320億円)といわれている。これと比べると、半値以下で取引されたことになる。筆者はブリヂストンに勤めていたが、その経験に照らしても、テーラーメイドはずいぶん安く売られてしまったものだと思う。
アディダスを離れたテーラーメイドは今後、新しい親会社のもとで、どのような将来像を描いていくのか。売却が明らかになったのと同日の5月10日に、テーラーメイドがトッププロの1人である、ローリー・マキロイと用具の使用契約を締結することも発表された。
マキロイはナイキのゴルフ用具撤退前は、同社の看板選手だった。今回、テーラーメイドと結んだ契約は、10年間にわたってゴルフクラブ14本とボールの使用を内容とするもので、総額約1億ドル(110億円)の長期大型契約だといわれている。
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