たとえば、銀行やメーカーの営業マンが、「いつ、どの会社のどの部署の誰に会った」という情報は、ライバル社や関連業界の人間が知れば、どんな案件を進めようとしているのか、ある程度推測できる。だから、取引先名簿や名刺は、かなり企業秘密に近いといえるだろう。
しかし、メガバンクのA社がJR東日本と取引をしているといった情報だったらどうだろうか。大半の人が、そうした取引先の情報を知っているし、新聞等で報道されることもある。そうした観点から見れば、取引先名簿や名刺などは企業秘密というほどのものではないことになる。
また異業種交流会などに頻繁に参加したり、あいさつ回りの機会が多く、不特定多数の名刺をたくさん持っているような人の場合も、名刺の束に意味はない。それを捨ててしまったとしても企業秘密の漏洩にはあたらない。
ただ、名刺やメールアドレスなどが入った名簿などは、「個人情報」に該当する。特に、データ化して検索ができるような形にしている場合などは、個人情報保護法の対象になり、きちんとしたデータの管理が要求される。データ化している場合は、外部に流出しないようにパスワードを設定したり、名刺も破棄する場合は、シュレッダーにかけたりするなどして他人の手に渡らないような対策を講じるのが重要だ。
電車や飲み屋では誰が聞いているかわからない
「うちの会社が、ロケット開発で有名なB社と取引していたとは知らなかった」「来年から海外展開か。楽しみだなぁ」「業績最悪! ボーナス出るのかしら?」――。
社内研修や社員説明会などの場で、会社の業績や、社内の開発動向などについて話を聞くことが多いだろう。そこには、経営戦略から教育ノウハウまで情報がぎっしり詰まっている。研修はある意味、企業秘密の塊ともいえるわけだ。この研修の内容を外部に漏らすのはもってのほか。大抵は、研修中に研修内容について、外部にしゃべったり、飲み屋等で話題にしてはいけないと注意はしているはずだ。
ところが、同じ話を聞いた社員同士が、帰りの電車の中や、帰りに立ち寄った居酒屋などで、研修内容をさかなに話が盛り上がることは多い。全員の共通話題だから当然だろう。他部署に移った同僚や、同期と久々に会える機会でもあり、そうしたうれしさや研修が終わった解放感などが加わり、いっそう口が軽くなるわけだ。
電車の中や居酒屋にライバル社の社員やライバル社の取引先などがいれば、情報漏洩につながる。そうした公衆の場で、社外に漏らしてはいけない話は慎んだほうがいい。
最も危険なのは、学生時代の同級生の集まりだろう。典型は、新しい環境になじめず不満がたまってのうさ晴らしの飲み会。もちろん、こういう場があるから、つらいことがあっても、何とか乗り越えられるのも事実だが、一歩間違えれば情報漏洩につながる。
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