東芝「メモリ事業売却」が二転三転する舞台裏 再び「日米韓連合」が軸、ただ先行きは霧の中
とはいえ、WDの足元もぐらついている。
もともと東芝の合弁パートナーは米サンディスク(SD)だった。WDはHDD(ハードディスク駆動装置)で世界最大手だが、HDDは東芝やSDが手掛けるNANDフラッシュメモリに置き換えが進んでいる。WDは2016年に190億ドルでSDを買収してNANDに乗り出した。
しかし、SDのメモリ事業は非常に脆弱だった。東芝との合弁事業においては、設備投資の資金負担割合に応じてチップを引き取る権利を持つが、実際の工場は東芝の所有物で、製造オペレーションも東芝に依存している。離婚した場合により困るのはWDなのだ。
だからこそ、合弁相手が東芝以外になることに全力で反対し、TMCを手に入れることで事業の主導権を握ろうとしている。
だが、WDのバランスシートには、100億ドルののれん、38億ドルの無形固定資産が計上されている。これらの大部分はSDにかかわるもの。強硬姿勢を続けて東芝と決裂すれば、減損を迫られかねない。
東芝がWDに揺さぶり?
こうしたWDの弱みを突く形で、東芝は揺さぶりをかけてきた。6月末、建設中の四日市工場の新棟の設備投資を東芝単独で行うと発表、9月に入っても岩手県北上市で新棟を建設すると発表した。どちらも設備投資についてはSDの参画を別途協議する、と強調している。
このまま日米韓連合にTMCをさらわれ、国際仲裁で敗れることになれば、WDもまた窮地に立たされる。
追い込まれているはずの東芝だが意外に交渉上手なのかもしれない。事実、ベインからは条件アップを勝ち取った。今後もしWDが大幅に譲歩すれば、東芝は再度WDへ乗り換えるかもしれない。ただ、その分だけ交渉期間は長くなっている。各国の独禁法審査などを考えると、それが吉と出るかは別問題だ。
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