東芝「メモリ事業売却」が二転三転する舞台裏 再び「日米韓連合」が軸、ただ先行きは霧の中
すんなり日米韓連合に決まらなかったのは、自分たちの同意なしに東芝メモリを売却することを契約違反として、国際仲裁裁判所に差止め請求をしているWDの存在がある。革新機構と政投銀はWDとの係争解決を最終契約の条件としているが、WDが訴訟を取り下げなかったために交渉がストップしてしまった。
2018年3月末までに債務超過を解消できなければ上場廃止となる東芝は、TMC売却を急ぐ必要がある。各国の独占禁止法の審査期間を考えれば猶予はないからだ。
譲歩を約束したのに契約書に反映されず
優先交渉はうやむやになり、日米韓連合に加えてWD、さらに鴻海の3陣営と交渉が続いていた。特に8月頃からはWDを含む日米連合が本命に変わっていた。日米連合とはWDに加え、投資ファンドの米KKR、革新機構、政投銀が入る。
しかし、WD陣営の金額が見劣りしたうえに、将来を含めたTMCへの出資比率をめぐって両者の溝が埋まらなかった。支配権を高めたいWDに対し、独禁法の審査が難航することなどを懸念する東芝も妥協しなかった。
「WDのスティーブ・ミリガンCEOが譲歩を約束したのに、彼らが出してきた契約書のドラフトではそれが反映されていないことがあり、東芝側は不信感を募らせた」(関係者)。
このすきを突く形で、ベインが巻き返しを図った。設備投資負担を含めた買収額を上乗せし、革新機構などの出資分をWDとの係争が片付くまで肩替わりする、米アップルが一部の資金提供を行う、などの新提案で形勢をひっくり返した。SKの資金拠出のスキームは固まっていないが、独禁法に影響しない程度に抑えることも改めてコミットしたようだ。
だが、これで決着かというとまだ一波乱も二波乱もありそうだ。東芝の決定に対し、WDは即座に「極めて遺憾」と声明を発表した。WDの剣幕に革新機構や政投銀がひるむ可能性はある。
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