「ヒカキンが目標」痛いユーチューバーの末路 「自分という商品の売り方」を知らなすぎる
VALUはSNS上での人気を指標にして「自分という商品の価値」を見える化する仕組みだ。ITでいま最も注目を集めるサービスのひとつである。私は「自分という商品を高く売ろう」と提唱しているが、VALUはまさに「自分という商品の売り方」が問われる時代に入りつつあることを象徴していると感じた。
ヒカキンとヒカル、この2人がユーチューバー市場で「自分という商品」を高く売り続けてきた事実は変わらない。億単位ともいわれる年収を夢見て、第2のヒカキン、ヒカルを目指す者も多い。しかし、トップユーチューバーへの道のりは険しい。
30代チャラ男ユーチューバーの「頭の中」
陥りがちな失敗とはどんなものか。以下は筆者の知人をモデルにしたフィクションだが、これを例に考えてみたい。
児玉ユキオ(仮名)は30代の独身。あだ名は「チャラ男」で、モットーは「会社の仕事は適当に流して、オレは副業で稼ぐ」だ。あるとき、彼は「ユーチューバーになったよ〜。商品をバンバン売りまくるよ〜」と周りに触れ回っていた。
動画を再生すると、いきなり登場するのは生活臭が漂うアパートの一室だ。青白い蛍光灯に照らされた食卓のうえに、ポツンとトースターが置いてある。数秒間、画面が上下して「なんだろう」と思って見ていたら、いきなりヨコから彼の大きな顔が出てきて、思わずのけぞった。ホラー映画のようだ。しばらくすると、彼は無表情でボソボソと語り始めた。
「……あれ、いいのかな。えっと……。あ、はい。こんにちは。ユーチューバーのユキオです。今日ご紹介したいのは、ですね。あのー。象印の、えーっと、はい、トースターですね。ボクはこのー、トースターを先週買ったばかりなんですけど。前の機種はたしか、ええーっと、10年ほど使っていまして……」
こうして書き起こしてみても、彼がなにを言っているのか「まったく意味不明」なのがよくわかる。勢いが取り柄だった男の見る影もない。つらくなって数十秒で動画を止めた。ユキオはこんな調子で、デジカメ、リュックサック、ビジネス書、洗剤と、まったく脈絡がない商品の紹介動画を十数件アップしていた。コメントはゼロ。再生回数は最高で数十回だ。
「スマホがあれば、ユーチューバーに速攻でなれる」と考えた彼は、スマホで動画を撮影してすぐに動画をアップしていた。編集を一切していないため、とても見てはいられないクオリティだ。痛いユーチューバーという言葉が頭に浮かぶ。
「オレは副業で稼ぐ」と豪語するユキオは、かつて確実におカネが入るからと「せどり」をやっていた時期がある。「せどり」は、本などの中古商品を安く仕入れてネットで転売する商売だ。昔は商品知識や経験が必要だったが、いまはネットで検索すれば相場もわかるし、アマゾンやメルカリを使えば個人が商品を売るのも簡単だ。
「せどりで月100万円売り上げる人もいる」と聞いたユキオは、さっそく古書のせどりに挑戦したが、現実は厳しかった。仕入れはブックオフなど中古書店を巡回するのだが、売れそうな本を見つけるまでにとにかく時間がかかる。仕入れたからといってすぐ売れるわけではないため、ワンルームの狭い部屋には在庫の本が積み上がり、床は足の踏み場もない。
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