鳥貴族の決断に見える激安居酒屋の限界価格

28年ぶり値上げの本音と外食産業への影響

鳥貴族の大倉氏は10月1日からの「全品298円均一」の値上げについて、こう話す。

「客単価は現在2110円(税込)です。1品18円の値上げ分がそのまま上乗せされれば客単価は約2245円(税込)となります。しかし実際は少し下がるかもしれません。したがって客単価は現状より少し高くなる程度にとどまり、価格競争力は下がらないと考えています。また値上げ後もこれまでのように商品のブラッシュアップと価値づくりに全力を尽くします」

鳥貴族は今期(2018年7月期)では直営で80店舗出店する構えだ。TCCが加わると100店舗を超すと見られるが、出店ペースに影響が出るような人手不足はないという。

鳥貴族の「全品298円均一」への値上げは「300円の壁」を超えなかったこともあり、外食業界では好意的な見方が多い。

値上げが28年ぶりというのは常識を通り越して異常

「挽きたて」「打ち立て」「茹でたて」のそば「ゆで太郎」をフランチャイズチェーン展開する「ゆで太郎システム」(2017年6月期170店舗見込み)社長の池田智昭氏は、原材料の値上がりなどを理由に今年3月値上げに踏み切った。

「鳥貴族の値上げが28年ぶりというのは常識を通り越して異常だったと思います。頑張って280円均一を維持してきたが、頑張りきれなくなったというのが本当のところでしょう。苦渋の選択だったと思います。量を減らして価格を維持するより値上げしたほうがよほどよかったと思います。当社は原材料費の値上がりなどを理由に今年3月に値上げしましたが、最大の目的は社会保険や有給休暇まで含めた人件費の値上がりに対応するためです。今後外食チェーンは人材確保にしのぎを削る時代に入ると思います。今年秋には鳥貴族に追随して値上げするチェーンが増えるでしょう」

現在、飲食業界を取り巻く値上げ圧力の中で大きいのが、人手不足から来る人件費の値上がりだ。東京・港区芝を中心に居酒屋「駒八グループ」(10店舗)を展開する「駒八おやじ」(八百坂仁)はこう言う。

「居酒屋の値上げ要因には今年6月、国税庁が実施したビールの適正価格指導による値上げがあります。また、人手不足の影響で居酒屋の関連企業であるオシボリ業界やゴミ回収業界の値上げも起こっています。人手不足による値上がりは外食業界、関連業界全体に波及しており、今年秋口には鳥貴族のように値上げする居酒屋が増えるのではないでしょうか」

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