鳥貴族の決断に見える激安居酒屋の限界価格 28年ぶり値上げの本音と外食産業への影響

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居酒屋業界の先行きには2019年10月に先送りされた消費税10%の値上げも控えている。外食業界を取り巻く経営環境はコストアップの圧力に満ちている。

英国風パブ「HUB」(ハブ。101店舗)の社長、会長、相談役を務めた金鹿研一氏(75)の鳥貴族に対する指摘は非常に面白い。

「今回の鳥貴族の全品298円均一の値上げは焼き鳥1皿2本のための〈スリーハンドレッドウォー〉――『300円の壁』へのチャレンジが始まったんだと考えています。サイゼリヤ会長の正垣泰彦さんのようにクソまじめに合理性・効率性を追求する姿勢が、浮き沈みの激しい外食業界で長く生き延びる秘訣だと思います。

厨房から店舗運営、食材調達、人事教育など、あらゆる面でイノベーションの戦争が始まったんだと思います。イノベーションにどう取り組むか。それが鳥貴族の次を占う最大のポイントではないでしょうか」

日本の外食価格は先進7カ国の中で最も安い

これまで日本の外食業界は「失われた20年」のデフレ時代にフード・ドリンクメニューを下げて、原材料費、人件費を削り生き延びてきた。その結果、日本の外食業界の外食価格は先進7カ国の中でも最も安くなり、昼食だと500円のワンコインが一つの目安になってきた。

しかし、3年後に東京オリンピック開催を控え、訪日外国人客が年間3000万~4000万人もやって来る時代だ。外食業界は大きな転換点に突入した。

デフレ時代の最強の勝ち組「鳥貴族」が「全品298円均一」と値上げに踏み切ったことで、居酒屋・外食チェーンの秋の値上げラッシュが起こるのは確実だ。鳥貴族の値上げが、デフレ脱却の起爆剤となるのか――居酒屋・外食戦争が新しい段階に突入するのは間違いないだろう。

中村 芳平 外食ジャーナリスト

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なかむら よしへい / Yoshihei Nakamura

1947年、群馬県生まれ。実家は「地酒の宿 中村屋」。早稲田大学卒。流通業界、編集プロダクション勤務、『週刊サンケイ』の契約記者などを経てフリーに。日刊ゲンダイの「語り部の経営者たち」にレギュラー執筆、ネット媒体「フードスタジアム」に「新・外食ウォーズ」、「ビジネスジャーナル」に「よくわかる外食戦争」などを連載。

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