「名古屋めし」として広まっていったのも興味深い。正直ここまでパンチの効いたまぜそばであれば、「名古屋めし」として売り出さなくともある程度まで売れたかもしれないが、それを「ご当地グルメ」として売り出していった。商材としても情報としても全国に非常に広げやすかったというメリットがある。
「麺屋はなび」と同じ中部地方にある飛騨高山ラーメンの名店「豆天狗」の店主・冨田佳浩氏はこう語る。「『台湾まぜそば』は、「名古屋めし」の定番に現代のエッセンスが入った商品で、通常のラーメンとは違う広がり方で人気になっていきました」
「通常のラーメンと違う広がり方」とは
冨田氏も指摘する「通常のラーメンと違う広がり方」とは何か。

まず、ラーメン店の視点から見ると、参入のしやすさがある。台湾まぜそばを含む、汁なしラーメンは一般的なラーメンよりも味がブレにくく、コストが抑えられるという点がある。それはスープがないからだ。ラーメン店にとってスープは命。まぜそばのタレもこだわれば果てしないが、やはりスープがない分、一般的な参入障壁は低いと考えられる。
商品性そのものもラーメンファンをうならせる。とにかくボリュームが多く、辛く、ニンニクが効いていてパンチがある。作る工程、混ぜる工程、最後の追い飯までがアトラクションのように続いていく。「中毒性」があるのだ。

食品会社に勤めるラーメン好きの30代男性Aさんは、「独特の辛味やニラの香り、そしてジャンクさ。台湾まぜそばには『それが食べたい』という特別感があります。逆を言えば『ラーメン食べたいなぁ。そうだ今日は台湾まぜそばにしよう』とはなりません」と話す。
台湾まぜそばは、いわゆるラーメンのほかの商品とは食い合わない。ラーメンの仲間としてくくられることが多いものの、すでにラーメンとは一線を画した食べ物として成り立ちつつある。
Aさんはそれが、「『ラーメン二郎』と同じだ」と評する。筆者も同感だ。東京・三田を本店として周辺に展開するお店。ラーメンでありながら一つのジャンルとして、ラーメン通がいろんな角度で語るのがラーメン二郎である。台湾まぜそばが確立しつつあるのも、一般的なラーメンとは競合しない、独自の地位。「博多豚骨ラーメン」「札幌味噌ラーメン」などと同列の新しい「ジャンル」に発展しているといっていいだろう。
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