新山氏は、自分が独立して出したお店の新メニューとして、台湾ラーメンを試作していた。鶏の淡麗系のスープに台湾ミンチを合わせる。そんな味を試してみたが、大失敗だった。断念し、試作に使った台湾ミンチを捨てようとしていたところ、アルバイトの女性が「捨てるのはもったいないから、ゆでた麺にかけて食べてもいいですか?」と提案したのが、台湾まぜそば誕生のきっかけとなる。
新山氏は、アルバイトの女性に言われたとおり、茹でた太麺に台湾ミンチを合わせて食べてみた。これが結構旨かった。そこから一気にブラッシュアップし、「台湾まぜそば」として商品化。最初はジャージャー麺のような見た目の限定メニューとして提供していたが、ファンがつき、レギュラー化する。現在の形になるまでそこから3年かかった。

「麺屋はなび」の台湾まぜそばは、全粒粉入りの自家製麺を使う。加水率が高めで、麺肌はうどんを意識している。普通のまぜそばよりも茹で時間は長めにとり(6分程度)、麺を上げる時にテボの中で麺を棒でグリグリと押し付ける。こうすることで麺に傷が付き、糊が出てタレに絡みやすくなる。またこの糊成分が醤油の角を取り、まろやかな味わいになる。
2013年の「名古屋めし総選挙」で準グランプリを受賞
2013年の「名古屋めし総選挙」では準グランプリを受賞し、「名古屋めし」として一気に広まった。その後も取材が殺到、東京にも進出し、名前は全国区になった。「台湾まぜそば」というネーミングは、「台湾ラーメン」の元祖「味仙」にきちんと仁義は通しているそうだ。
その後、「台湾まぜそば」は「麺屋はなび」1店にとどまらない広がりを見せる。大都市圏を中心として全国で他のラーメン店が続々と提供を始めたのだ。大手ラーメンチェーンでも「スガキヤ」や「はなまるうどん」がメニュー化したり、企業がカップ麺や冷凍食品を販売したりと、「麺屋はなび」のあずかり知らぬところで「台湾まぜそば」がどんどん現れた。
ただ、新山店主は意に介さない。「『台湾まぜそば』は商標登録していますが、これはあくまで何かあった時の防御のためで、攻撃に使うものではないと考えています。いろいろなお店が提供を始めましたが、感謝しかありません。『やるなら広く世の中に』と考えていましたし、乱立すると逆に本物が際立つというのもあります」。
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