貧困や虐待に苦しむ子をどうしたら救えるか 理解してくれる大人と社会の受容が孤立防ぐ

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荒井:私は別に専門職ではなく、ただ地で子供と関わって来た人間なんですけど。やっぱり専門職の人とは違う役割があるんではないかと思っていて。それは何かというと、子供の声をちゃんと聞いてあげるとか、専門家より時間をかけて子供たちと関われるとか、何の目的もなく「普通の人」として子供と会えるというところが、子供と関わる中で一番求められて来たのかなと思っていて。(そのように子供を)サポートする人をたくさん作っていくといいのではないかと。

また、心理的なハードルもあるとき、「この人がいるから行ってみよう」という人がいることがまず重要で。私たちは特に、情報も届かずなかなか支援に乗れない、とりこぼされた子たちをサポートしていきたいと思っています。その子たちにリーチしていくときに、場を構えるのが先というよりは、その子たちが信頼できる大人を作ろうというところから考えて、人材育成から始めたというところがあります。

人の育成をしていて、1期8人ずつで、今16人。第3期のコミュニティーユースワーカーの募集をちょうど1周年記念の時にリリースして、26人くらいに増やすので、これからは拡大しようかなと思っています。そういった人たちがまず子供に寄り添って、子供の声を聞いて、「これをやってみたい」とか、「こういうことで困っている」というのを拾った後に、場を作るという流れを作っていきたいなと思っていて。まずは人ありき、子供ありきで場を構えて、その場にいろんな子が来るという形をいくつも作って来たというのがこれまでです。

:いいですよね。要は子供たちとか、心にいろんな問題を抱えてきた人たちを、「へい、おいで! 大丈夫、大丈夫よ!」と言ってあげる人がいっぱいいるってことですよね。

一緒に日常の安心や楽しさを紡いでくれる人

小澤:そう。「この人がいるからなんとかなるかな」っていう内在化される存在が複数いたらなって。

私たちは、日常の中のちっちゃい選択の積み重ねでできているじゃないですか。たくさんの本があってその中から自分でこの本を選んで読んだとか、今日のご飯何食べる?とちゃんと尋ねてもらえるとか、こんな文化に触れたとか、あの人と一緒に作ったプラモデルの記憶とか。そんな日常が積み重なっていくことは、子供たちが、なんとかなると自分や誰かを信じていくプロセスにおいてもとても大切なことだと思うんです。

そして、その日常を作るって、もしかしたら、誰もができることで、むしろそこをやっていかないといけないと思っていて。子供たちの日常に「一緒に日常の安心や楽しさを紡いでくれる人。」という人がたくさんいたらいいなと思っていて。

:日常の再現性って、今まであるようでなかったですね。

荒井:やっぱり私だけではできなくて、関わっていく中で難しい問題にぶつかった時は、専門的な関わりってどうしても必要になるので、専門家の方と一緒にやる。それが団体の中にあるというのがPIECESの特徴なのかなと。

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