ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊 元社員から見た「ブランド」ゆえのジレンマ
ヤマトは10月1日、27年ぶりに宅急便料金を値上げする。ドライバーの負担を減らすためだ。
だが、ドライバーの収入は、集荷と配達の個数によって決まるインセンティブによる部分も大きい。確かに荷物が減れば体力的に楽にもなるが、収入に響くのは痛い。
「稼ぎたいと思ってこの会社に入ったのに、稼げなくなると思うと考えますね。でも、俺も勝手なことばかり言ってますよね。荷物が多いと体がもたないなんて文句言って、今度は荷物が少なくなると給料減って困るとか言うんだから」
中堅ドライバーは、苦笑いをしながら職務に戻っていった。
ヤマトが連日報道されたような一連の問題でいろいろと改革をした結果、現場はどうなったか?
まだ、始まったばかりではあるが、営業所によっては人も補充され、ドライバーは休憩もしっかり取れるようになり劇的に変わった店もある。
その反対に、今までよりもむしろ大変になった店もある。人は辞め、人員補充もされていない。むろん、休憩など取れる状況ではない。変わらない激務でケガをして休んでいるドライバーもいる。営業所によって差がある。
未払い残業代の件に関してもそうだ。
未払い残業代をもらって満足する者、不満に思う者。同じくらい残業しているにもかかわらず、金額に大きな開きがあったらしい。社員のモチベーションアップの目的もあったが、新たな不満の種にもなっている。まだまだ、足並みがそろっていないのが現状である。
ドライバーたちの間でも、「ヤマトはよくなった」という意見と「やっぱり何も変わらない」という声に二極化している。
値上げをめぐるセンター長の憂鬱
ヤマトはドライバーの待遇改善のため、当初、今後引き受ける荷物の総量を約8000万個減らす計画を示していたが、2017年度は前年度比4000万個弱の削減にとどまる見通しだ。値上げを提示したことで他社に流れると予想していた顧客が、今後も利用しているためと7月末に発表した。
これは多くの企業や個人の顧客が「値上げしてもヤマトを使い続けたい」という方針だということだ。
複雑なのは現場だ。営業所の責任者であるセンター長は、エリア内の法人企業に対する値上げ運賃交渉のための見積書の作成に追われている。
法人相手の金額は一律ではない。宅急便を利用する数などから、営業所と各企業の交渉により決められている。どのくらいの値上げを行うか、各法人との交渉がこれから始まる。営業所の売り上げを考えればどこまで強気に踏み込めるのか、どこまで踏み込んでいいのかの指示は会社からは出ていない。
「荷物の取扱量を減らすための取引停止を前提とした値上げなのか、それとも利益を残すための値上げなのか、正直わかりません」
あるセンター長は漏らす。
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