ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊 元社員から見た「ブランド」ゆえのジレンマ
宅配便業界最大手のヤマト運輸。他社では対応できない荷物にも対応する、対応してみせる。その姿勢が顧客の信頼を勝ち取ってきた。
「会議で至急使う書類」
「結婚式で袖を通す衣装」
「翌朝に建設現場で使う工具や資材」
「誕生日やクリスマスのプレゼント 」
ヤマトは顧客の多様なニーズに対応するために、さまざまなサービスを作り上げてきた。時間帯サービス、翌朝10時までに配達するタイムサービス、関東当日便、ビジネス5(23区のみ当日5時までに配達)などだ。
一方、顧客のニーズに応えるために、それらのサービスを遂行するために、ドライバーの肩には計り知れないプレッシャーがのしかかっていた。
私は十数年ヤマトのドライバーとして勤務した経験があり、かつてのドライバー仲間との交流などにより、今も現場を見聞きしている。ヤマトの宅配現場では、ハード面のサービスだけではなく、顧客対応などソフト面でのサービスも高度なものが求められる。つねに「ヤマトこそ」「ヤマトだから」「ヤマトなのに」「ヤマトに限って」の言葉が付きまとってきた。そのプレッシャーもドライバーが疲弊する大きな要因になってきた。
ある中堅ドライバーの憂鬱
「ヤマトに関するいろんなニュースが流れていたときは、お客さんから同情の声やねぎらいの声、なかには今までのことに対して謝罪してくる声もあったけど、最近は何だか普通に戻りました」
ヤマトのある営業所の中堅ドライバーは、荷物を仕分けながらこう話してくれた。
「少し前は『無理のないスケジュールでいいよ』と言うお客さんも多かったですが、またタイトな時間で再配達を依頼する方が増えましたね。いつか、『いつまでも甘えてるんじゃねぇ』って言われないかヒヤヒヤしてますよ。汗水垂らして走ってたって、そんな演技するな!なんて言われかねません」
連日報道された、宅配便に関する問題も前ほどには熱がないものになっている。世間の関心が徐々に薄らいでいる。ドライバー自身もそんな世間の風当たりを肌で感じている。
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