ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊 元社員から見た「ブランド」ゆえのジレンマ

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会社としては当然後者だが、今のヤマトが取り組んでいる問題を見ると、一概にそうとは言えない。

今までお世話になった荷主に対して無下にはできない。かといって中途半端な交渉をしても変わらずドライバーに負担を強いるだけだ。おそらくどんな結果が出たとしても会社から文句を言われるだろうと、そのセンター長は頭を抱える。

ある雑貨店主の憂鬱

「正直、どのくらいの値上げを要求してくるかヒヤヒヤしているよ。でも、信じてるよ、ヤマトさんとは付き合い長いし、そんな薄情な人じゃないよ、近藤(仮名)さんは……でもね……」

ヤマトを利用する雑貨店店主は語る。

「近藤さん」という名前が出てきたように、店主はヤマトではなくドライバーに荷物を預けているという感覚だ。

この店は、もともと他社で荷物を出していた。そこにその近藤氏が正規の運賃より安い運賃設定で営業に来た。

「ヤマトさんに配達を希望するお客さんも多いし、前からヤマトを使いたいと思っていたからね。でも、運賃が高くてね。それにうちみたいな小さい店だと送料別なんて言ったらすぐお客が離れちゃうから。そんなときに近藤さんが営業にきて、安い見積もりと人柄に惚れちゃって」

店主に話を聞いている最中、同業他社が配達の荷物片手に封筒を持ってきた。金額に関する見積もりだ。

「一応、うちでも万が一のため動いておかなきゃね」

その封筒から中身を取り出し、渋い顔で見ている。

ここ最近、ヤマトの担当ドライバーがその近藤氏から違うドライバーに変わったらしい。

ドライバーの疲弊に引き金を引いたのは何であるか。その大きな要因が、ヤマトのシェアアップ至上主義だ。

業界トップをひた走るヤマトは、毎年着実にシェアを増やし、ライバルの佐川急便に水をあけていた。そこから、少しずつ日本郵政がシェアを伸ばしてきた。かつて宅配便のあり方をめぐり激しいバトルを繰り広げた相手がまた力をつけてきたことに、焦りを感じ始めていたのだろう。

2013年に佐川急便がアマゾンから撤退。当時、既存の販路ではシェア率拡大に限界を感じていたヤマトにとっては渡りに船とばかりに、ヤマトがアマゾンの荷物を引き受けることになった。

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