トヨタ「時間に縛られない」新勤務形態の狙い 裁量労働に近いがちょっと違う絶妙な仕組み

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第2のポイントは、万が一「イレギュラー」な長時間労働が発生した場合にも、不足分の残業代をきちんと精算する制度になっているということである。

写真はトヨタのロゴ、2016年9月パリで撮影(写真:ロイター/Benoit Tessier)

この点、自社流の裁量労働制を導入している会社でしばしば問題になるのは、たとえば、「当社では、営業職の社員には営業手当を一律10万円支払っている。何時間残業しても、これがみなし残業代である」というように、みなし残業代で担保されている残業時間数を超えても、超過分を精算しないというパターンである。

実労働時間数が仮に長時間になったとしても差額精算をしなくても良いのは、高度専門職を対象として国が認めた本来型の裁量労働制の場合のみであり、自社流の裁量労働制の場合は、超過分の精算をしないということは許されない。

トヨタの新制度は「裁量労働制だからいくら残業をしても残業代を支払わない」という違法な考え方とは一線を画している。

労働時間管理をきっちりと行う

第3のポイントは、通常の社員と同様、労働時間管理をきっちり行う予定だということだ。

労働時間の管理を行うからこそ、月の残業時間数が45時間以内におさまっているかということや、万一45時間を超えた場合に、いくら追加残業代を支払えば良いのかも計算できるということは言うまでもない。

そして、これは本来型の裁量労働制でも同じなのだが、午後10時から午前5時までの間に深夜労働を行った場合は、「深夜割増手当」が別途追加支給されなければならない。深夜割増手当の払い漏れを起こさないためにも、労働時間の管理は必要なのである。

少しそれてしまうが、労働時間管理は、給与計算のためだけに行うのではないということである。社員の労働時間を把握することで、働き過ぎで過労のリスクがある社員がいないかという健康管理ができる。一部の社員に負荷が偏っていないかとか、特定の部署だけ極端に残業が多くないかを見極める業務効率の向上にもつながる。

とくに健康管理という意味では、一般社員であろうが、裁量労働で働く社員であろうが、管理監督者であろうが、働き過ぎによる過労を防がなければならないというのは同じである。現実に、残業代には関係ないからということだけで、管理監督者や裁量労働制で働く社員の労働時間管理を行っていない会社は少なくない。

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