ネットに出回る「偽造医薬品」の危ない実態 「身を守る方法」を専門家に聞く
そうはいうものの、大半の人は「まさか」と思うだろう。だが、私たちが考えている以上に、偽造医薬品の脅威は身近にあるのだということを示すデータがある。
昨年、国内で勃起不全(ED)治療薬を製造・販売している4社の製薬会社が合同で実施した偽造ED治療薬に関する調査によると、インターネット経由で発注・入手した治療薬のうち約40パーセントが偽造医薬品だったことが報告されている。
また、少し古いデータになるが、2006年にはWHOからも、所在地を隠匿した非合法なサイトから購入した医薬品のうち50パーセントは偽造医薬品であるという調査結果が発表されている。
健康被害も起きている
さらに、2011年には国内でED治療薬の偽造医薬品を飲んだことが原因と考えられる健康被害が2件発生した。1件は海外からの個人輸入薬を服用後、一命はとりとめたものの、副作用と考えられる脳血栓が確認され、もう1件は、いまだに因果関係は明らかにされていないが、間質性肺炎を起こし死に至ってしまっている。病院に搬入された際、この患者のポケットから偽造医薬品が見つかっており、患者宅からも数種類の偽造医薬品が発見されたという。
これ以降、偽造医薬品による重大な健康被害は報告されていないが、安心はできない。
「もしかしたら偽造医薬品を服用した人が見過ごしてしまうくらいの軽い健康被害が出ている可能性があります」(坪井准教授)
例えば、海外でやせ薬とされる漢方薬に、うつ病の治療に用いる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)含有の偽造医薬品が見つかった事例がある。
SSRIは、服用開始時に副作用で嘔気が出る場合があることが知られている。このやせ薬はSSRIによる副作用で食欲が低下することを利用し、飲めばやせると謳っていたと考えられる。この場合、死に至ったり、入院したりすることはないが、消費者の身体には軽微な副作用が出ていることになる。しかし、飲んだ人の多くは、それをまさか偽造医薬品のせいだとは考えず「少し気持ち悪い」「食欲がない」ですませてしまっているはずだ。
このような事例のように国内でも消費者が「気のせい」「いつもと少し違うかもしれない」ですませてしまうような、偽造医薬品による軽微な健康被害が起こっている可能性はあるのだ。
被害にあわないためには、一体、どうすればいいのか。