ネットに出回る「偽造医薬品」の危ない実態 「身を守る方法」を専門家に聞く

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その原因について「薬局がハーボニーの仕入れに非正規流通経路を利用したことにある」と坪井氏は指摘する。

通常、わが国の医薬品は製薬会社から医薬品卸業者を通して薬局や病院へ。あるいは、製薬会社から直接医療機関へ卸され、患者の手に渡る流通ルートをたどる。

安く仕入れて卸す“非正規流通経路”の存在

だが、これとは別に、製薬会社以外から安く医薬品を仕入れ、卸す“非正規流通経路”があるとされる。今回、偽造医薬品が紛れ込んだルートでは、法令上定められている医薬品を持ち込んだ者の氏名、医薬品名、数量などの記入は行われていたが、身分の確認は実施されていなかった。

後の調べで、偽造医薬品を持ち込んだ者の氏名は偽名だったことが判明。今回の件は、流通経路における医薬品取引の仕組みの隙をつかれたと考えられている。

ハーボニーの調剤を行うことが多いという京都府の保険薬局に勤務する薬剤師Yさんは、「期限切れによる医薬品のロスなどを軽減するために、非正規流通経路に興味を持っていました。しかし、ハーボニーの事件以降、利用は考えていません」と言う。

「薬局は患者様に偽造医薬品が渡らないようにする最後の砦です。偽造医薬品は健康被害を与えるだけではなく、命の危機にさらすおそれすらある。今後はこれまで以上に患者様を偽造医薬品の被害から守るという意識を強く持ち、医薬品の供給に携わりたいです」(薬剤師・Yさん)

また、坪井氏も「今回は、非常にまれな例。薬局が正規のルートで医薬品を購入していれば、今後、国内で同様の事件が起こることはまずないと考えられます」と語った。

現在、偽造医薬品が患者の手に渡らないよう、薬局で食い止めるための防止策の策定が国を挙げて進められている。6月8日には厚生労働省医薬・生活衛生局の『医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会』において再発防止策が発表され、1日も早い施行が待たれている。

実は、ハーボニー配合錠だけでなく、私たちが日ごろインターネットで購入している医薬品にも偽造医薬品が多く含まれているということをご存じだろうか。

「国内で被害にあいやすいのは、店頭ではなく、インターネットを通して医薬品を個人輸入するなど、通販を利用した場合です」(坪井氏)

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