米FDA承認、がん新薬「キイトルーダ」の実力 がんの種類ではなく、遺伝子異変に着目

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「キイトルーダ」を服用したことで、がんが消えたというエイドリアン・スキナー氏(写真:Whitten Sabbatini/The New York Times)

「キイトルーダ」とはどのような新薬なのか

がんの新薬「キイトルーダ」 (一般名ペンブロリズマブ)の臨床試験に参加した86人の患者の間に、共通点はほとんどなかった。腫瘍ができた臓器はすい臓だったり前立腺だったり子宮だったり骨だったりとさまざまだった。中には非常に珍しいタイプのがんを患っている女性もいた。標準治療が確立されていないがんで、彼女は身辺整理をするよう言われていた。

もちろん、共通項がまったくないわけではない。全員があらゆる標準治療でも効果が得られなかった進行がんを抱えていた。全員がDNAの損傷を修復する能力を妨げるような遺伝子変異の持ち主だった。キイトルーダは免疫系が腫瘍を攻撃するのを助けるタイプの新薬だったのだ。

この臨床試験の結果は『サイエンス』誌で6月8日に発表された。著しい効果が確認されたことから、米国食品医薬品局(FDA)は特定の遺伝子の異常のせいでがんにかかった患者向けに、早期にこの薬を承認した。

特定の遺伝子の変異を持つ複数の種類の腫瘍に対して使われる抗がん剤が承認されたのはキイトルーダが初めて。年に数万人のがん患者がこの薬によって救われるかもしれない。

「本当にすばらしい」と語るのは、ニューヨークにあるスローン・ケタリング記念がんセンターの医長、ホセ・バセルガだ。同センターでは、キイトルーダの臨床試験を指揮したルイス・ディアス博士も働いている。

臨床試験ではキイトルーダの投与を受けた患者のうち、66人で腫瘍がかなり小さくなり、そのまま安定した。18人では腫瘍が消え、再発もしていない。

対照群はいない。つまり著しく説得力のあるはっきりした結果を出さなければ認められないということだ。2013年に始まったこの臨床試験の費用を出したのは複数の慈善団体で、製薬会社は薬を提供しただけ。試験は今も続いている。

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